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  • 2015.08.31 Monday
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2008年版バフェットの手紙(5)

ウォーレン・バフェット氏が書いたバークシャー株主への手紙、その翻訳記事の続きです。 ※原文は下記のリンクから読むことが出来ます。 2008年版アニュアルレポート →http://www.berkshirehathaway.com/2008ar/2008ar.pdf 2008年版会長の手紙 →http://www.berkshirehathaway.com/letters/2008ltr.pdf 今回はバークシャーの中核事業である、保険事業についての章です。 ****************************************************************** 保険事業  当社の保険事業グループは1967年に初めてこの事業に参入して以来、バークシャーの成長を推進してきました。この喜ばしい結果は業界全体の繁栄によるものではありませんでした。2007年末までの25年間、保険会社の純資産利益率は平均8.5%であったのに対し、フォーチュン500社のそれは14.0%でした。当社の保険会社のCEO達が背中に風を受けていたのではないことは明らかです。しかしこれらの経営者達はチャーリーと私が初期には夢にも可能だとは思わなかった程に優れた業績をあげてきました。なぜ、私が彼らを愛するのかですって?ちょっと、その理由の数を数えさせて下さい。  ガイコでは、トニー・ナイスリー――現在、彼が18歳で同社に入ってから48年目になります――が規律ある保険引受けを維持しながら、市場シェアをむさぼり集め続けています。トニーが1993年にCEOになった時、ガイコは自動車保険市場で2.0%のシェアを持っており、同社は長い間その水準に留まっていました。現在同社は、2007年の7.2%から伸ばして、7.7%のシェアになっています。  新規顧客の獲得、および既存顧客の更新率の改善の組み合わせがガイコを自動車保険会社の中で第3位に押し上げてきました。1995年、バークシャーが支配権を握った時点では、ガイコは第7位でした。今では同社はステート・ファーム社とオールステート社の後塵を拝しているのみです。  ガイコは自動車に乗る人々にお金を節約させることが出来る為、成長しています。誰も自動車保険を購入するのは好きではありません。しかしほぼ全ての人は車の運転をすることは好きです。ですから、ドライバーは思慮深く、最もコストが低く、それでいて第一級のサービスを受けられる保険を探します。効率性が低コストの鍵であり、そして効率性がトニーの専門分野です。5年前には従業員1人当たりの保険契約数は299件でした。2008年には、その数字は439件となり、生産性が大幅に増加しました。  ガイコの現在の事業機会を眺めているとき、トニーと私は裸体主義者のキャンプにいる腹を空かせた2匹の蚊の様だと思います。第一に、そして最も重要なことに、当社の自動車保険における新規顧客は今爆発的に増えています。アメリカ人は今までにないほどに節約志向になっており、そしてガイコに多くの人が集まってきています。2009年1月、同社は保険契約者増加数の月間記録を――それも大幅に――更新しました。その記録はちょうど28日間しか続かないでしょう。群集に向かっていけば、2月の顧客獲得数はさらに良くなることが明らかだからです。  これに加えて、当社は類似の分野についても地盤を広げつつあります。昨年、二輪車の保険契約数は23.4%増加し、当社の市場シェアは約6%から7%超まで上昇しました。RVとATV事業もまた、出発点は小さいものの急速に成長しています。そして最後になりますが、私達は最近、確実な約束を提供してくれる大きな市場である商業用自動車の保険を始めました。  ガイコは今や何百万人ものアメリカ人のお金を節約しています。Geico.comに行くか、1-800-847-7536に電話して、あなたのお金も節約することが出来ないか試してみて下さい。  私達の巨大な国際再保険会社であるゼネラル・リーにとっても、2008年は素晴らしい年でした。しばらく前に、同社は重大な問題を抱えていました(1998年の後半に同社を買収した時、私はその問題を完全に見つけ損ねました)。ジョー・ブランドンが彼のパートナーであるタッド・モントロスの助力を得てCEOに就任した2001年までに、ゼネラル・リーの企業文化はかなり低下しており、保険引受け、損失引当金の見積もり、費用支出の規律は失われている有様でした。ジョーとタッドが就任した後、これらの問題は決定的に、改善へと向かいました。今日、ゼネラル・リーはかつての輝きを取り戻しています。昨年の春、ジョーは引退し、タッドがCEOになりました。チャーリーと私はジョーが船を正しい方向に向けたことに感謝しており、そしてタッドと共にあれば、ゼネラル・リーの将来は可能な限り最高のものになるだろうと確信しています。  再保険は長期間にわたる約束のビジネスであり、時には50年かそれ以上に及ぶものもあります。昨年は顧客に重要な原則を再認識させた年でした。すなわち、約束はそれを結ぶ人や団体よりも良くなることはない、ということです。そこはゼネラル・リーが抜きん出ている点です。同社はトリプルAの会社の後ろ盾がある唯一の再保険会社だからです。ベン・フランクリンがかつて言いました。「空っぽの袋を垂直に立てるのは難しい。」ゼネラル・リーの顧客はそのことを心配する必要はありません。 (※訳注:この手紙が書かれた後、3月に入ってから格付会社がバークシャーを1ランク格下げした為、同社はトリプルAではなくなってしまいました。)  私達の3つ目の主要な保険事業はスタンフォードに本拠を置き、わずか31人の従業員で組織されているアジート・ジャインの再保険部門です。これは特徴付けるのが難しく、敬服するのはたやすいという、世界で最も非凡な事業の一つかも知れません。  毎年毎年、アジートのビジネスは決して同じことを繰り返しません。それは非常に大きな取引、信じられない実行の速さ、そして他の者なら頭をかきむしる様な保険の保険料見積もりをいとわないことという特色があります。保険をかける必要のある、巨大かつ普通でないリスクがあれば、アジートにはほぼ確実に電話がかかって来ます。  アジートは1986年にバークシャーにやって来ました。たちまち、私はとんでもない才能を手に入れたことに気づきました。そこで私は必然の行動に出ました。ニューデリーにいる彼の両親に手紙を書き、彼の様な子どもがもう一人家にいないかと訊ねたのです。もちろん、私は手紙を書く前から回答を知っていました。アジートの様な人物は他には一人もいないのです。  私達の比較的小さな保険会社群も「ビッグ・スリー(訳注:ここではガイコ、ゼネラル・リー、バークシャー・ハザウェイ再保険事業部の3社のこと)」と同様、各々の分野においては傑出しており、いつものように私達に価値あるフロートを負のコストで手渡してくれています。これらの企業の結果は下の「その他の初期保険」にまとめてあります。スペースの関係で、これらの保険会社について個別に論じることはしません。しかしチャーリーと私が各社の貢献に感謝していることに安心してください。  ここに当社の保険事業という腰掛の4本脚の記録を示します。保険引受け利益が4本脚の全てが昨年、2007年と同様にバークシャーにコストなしで資金を提供してくれたことを表しています。そして両年とも、当社の保険引受けの収益性は業界全体が達成したよりも相当良いものでした。もちろん、私たち自身も周期的に保険事業において恐ろしい年を経験することになるでしょう。しかし、全体的にみれば、私は当社の保険事業が平均して保険引受け利益をあげるだろうと期待しています。もしそうなれば、私達は大規模資金をただで、将来にわたって無期限で使えることになるのです。 (※画像参照) ****************************************************************** バークシャーにおける保険事業の重要性は、バフェット氏が毎年この手紙の中で説明していることですが、 保険契約者から保険料が払い込まれてから保険金支払いが生じるまでの間、投資資金として使用することの出来る『フロート(滞留資金)』だということです。 保険会社が受け取る保険料はたいてい、最終的に支払うことになる保険金と運営コストよりも少なく、 それが保険引受け損失になり、それが『フロート』の資金コストになりますが、 保険引受けがトントンか利益を出すことが出来れば、フロートは実質コストゼロ以下になるというわけです。 バークシャーの保険事業も長期的にみて、フロートの「コスト」が平均してゼロ以下で運営されてきていて、 それによって市場金利以下のコストでレバレッジをかけるのと同じ経済的効果をバークシャーにもたらしてきたといえます。 それにしても、保険会社の持つ特性に早い段階で気づき、最大限に利用することで 素晴らしい投資実績を上げてきたバフェット氏の慧眼にはただ感心するばかりです。 (続く)

2008年版バフェットの手紙(4)-2

ウォーレン・バフェット氏が書いたバークシャー株主への手紙、その翻訳記事の続きです。 ※原文は下記のリンクから読むことが出来ます。 2008年版アニュアルレポート →http://www.berkshirehathaway.com/2008ar/2008ar.pdf 2008年版会長の手紙 →http://www.berkshirehathaway.com/letters/2008ltr.pdf 前回はバークシャーの規制公益事業についての章の前半部分を紹介しました。 今回紹介するのはその後半部分ですが、近年の企業買収分野についてのコメントとバークシャーの目指す所についてが主なテーマになっています。 それでは、どうぞ。 ******************************************************************  当社が長く公言してきた目標は企業に――とりわけ家族によって創りあげられ、所有されている企業に「選ばれる買い手」になることです。この目標を達成する方法は、それに尽くすことです。その意味はつまり、私達は約束を守らねばならず、買収した企業にレバレッジをかけることを避け、当社傘下の経営者達に普通ではありえない自由度を与え、そして買収した企業を、儲かっている時も儲かっていない時も(儲かっていて、どんどん儲かる方が好ましいですが)保有し続ける、ということです。  当社の記録は私達の隠喩に合致しています。しかしながら、私達と競合する企業買収者のほとんどは異なった道を選んでいます。彼らにとっては、企業買収は「商品」なのです。買収契約書のインクが乾く前に、その買収の担い手達は「出口戦略」を考え始めています。それゆえに当社は、自分達の会社の将来を本当に気にかけている売り手に出会った時、決定的な優位性を持っているのです。  数年前には当社の競合者は「レバレッジド・バイアウト・オペレーター」として知られていました。しかしLBOは評判の悪い名前になってしまいました。そこでオーウェル的(全体主義的)な装いで、バイアウトを行う会社はその名前を変えることにしました。しかし彼らが変えなかったことは、彼らにだけうまみのある報酬構造やレバレッジの乱用など、以前の活動の中核的な要素でした。  その新しい名前は「プライベート・エクイティ」になりましたが、それは事実とはまるっきり逆さまの名前でした。これらの会社による買収はほぼ例外なく被買収企業の資本構造に株主資本が占める割合の、買収以前の状態と比較して劇的な減少を招く結果になりました。ほんの2、3年前に買収されたこれらの被買収企業の多くは、プライベート・エクイティなる買い手によって積み上げられた負債によって今や生死の危機に瀕しています。銀行からの負債の多くは額面の70%より下の価格になっており、一般からの負債は更に大きく値下がりしています。これは言っておくべきですが、プライベート・エクイティ達は自分達が買った会社に今や喉から手が出るほど必要になっている資本を急いで注入しようとはしませんでした。その代わりに、彼らは残っている手元資金をまさにプライベートに保持し続けたのです。  規制された公益事業の分野には家族所有の大きな企業はありません。ここでは、バークシャーは規制監督者に「選ばれる買い手」になりたいと望んでいます。買収取引が宣言されたときに、買収者の適合性を判定するのは会社を売却しようとしている株主ではなく、規制監督者だからです。  買収者が規制監督者の前に立った時、その過去の所業を隠し立てすることは出来ません。彼らは買収者が事業を行っている他の州から証人を召喚し、その会社の全ての側面に関してどのような振る舞いをしていたかを、十分な株主資本をコミットする意志があるかということも含めて訊ねることが出来、そして実際にそうするのです。  ミッドアメリカン社が2005年にパシフィコープの買収を宣言した時、私達が事業を行うことになる6つの州の規制監督者は速やかに私達のアイオワ州での記録を点検しました。彼らはまた、慎重に私達の資金調達計画と許容能力を評価しました。私達はこの試験に合格しました。そしてこの先にあるだろう試験にも同様に合格することを期待しています。  私達の自信には2つの理由があります。1つ目は、デーブ・ソコルとグレッグ・アベルは彼らが携わるどの会社においても第一級のやり方で経営するだろうからです。彼らはそれ以外の経営の方法を知りません。それにも増して、私達は将来さらに規制された公益事業会社を買収したいと望んでおり――そして当社が今日活動を行っている管轄区内での事業上の振る舞いが明日の新しい管轄区での歓迎される度合いを決定することを私達は知っているという事実があるからです。 ****************************************************************** アメリカの企業買収ブームの主要なプレイヤーは1980年代頃のジャンク・ボンドを用いたものから、 上の記事で述べられているLBO、そしてプライベート・エクイティと呼び名こそ変わってきているものの、 基本的にはその中身(買収した企業に過度のレバレッジをかけて高値で転売するなど)は変わっていない様ですね・・・。 バークシャーの買収戦略はそれとは一線を画す、というのはずっと以前から変わっていないことですが、 規制公益事業の分野で更なる買収を目指すためには、既存の事業を行なっている地域で品行方正でなくてはならないし、実際にそうしてきているのだ、と述べています。 「新聞の一面をかざっても家族や友人に対して恥ずかしくない行動をして下さい」 というバフェット氏の行動規範が、こんな所にも現れている様です。 この章はこれで終わりです。次は保険事業部門についての章になります。 (続く)

2008年版バフェットの手紙(4)-1

ウォーレン・バフェット氏がバークシャー・ハザウェイの株主にあてて書いた今年の手紙の翻訳記事の続きです。 この章から、バークシャーの4つの事業部門のそれぞれについての、より詳細な業況説明に入っていきます。 また、今回の章は比較的長いので、前半と後半の2回に分けて記事にしたいと思います。 ※原文は下記のリンクから読むことが出来ます。 2008年版アニュアルレポート →http://www.berkshirehathaway.com/2008ar/2008ar.pdf 2008年版会長の手紙 →http://www.berkshirehathaway.com/letters/2008ltr.pdf ****************************************************************** 規制公益事業  バークシャーはミッドアメリカン・エナジー・ホールディングス社の87.4%(希薄化考慮後)の持分を有しています。そして同社は広範囲にわたる公益事業会社を所有しています。その最も大きな事業会社は(1)380万の末端顧客を有し、規模では英国第3位の電力供給事業者となっているヨークシャー・エレクトリシティおよびノーザン・エレクトリック、(2)主にアイオワ州で72万3,000人の顧客に電力を供給しているミッドアメリカン・エナジー、(3)西部の6つの州で170万人の顧客に電力を供給しているパシフィック・パワーとロッキー・マウンテン・パワー、そして(4)アメリカ国内で消費される天然ガスの約9%を輸送しているカーン・リバーとノーザン・ナチュラル・パイプライン、です。  私達のミッドアメリカン社の所有におけるパートナーは同社の素晴らしい経営者である、デーブ・ソコルとグレッグ・アベルの2名、そして私の長年の友人であるウォルター・スコットです。このうちどの陣営がどれほどの議決権を握っているかは重要ではありません。私達が大きな行動を起こすのは、それが賢明なことだと全員の意見が一致した時だけです。デーブ、グレッグ、ウォルターと仕事を共にしてきた9年間は、私の当初の思いを更に強めてくれました。それはつまり、バークシャーはこれ以上良いパートナーを見つけることは出来ない、ということです。  いささか不調和に見えますが、ミッドアメリカン社はアメリカ国内で第2の規模を誇る不動産仲介会社である、ホームサービシズ・オブ・アメリカも所有しています。この会社は16,000人のエージェントを有する21社の各地方では名の知れた子会社を通じて事業を行っています。昨年は住宅販売業にとっては悲惨な年でした。そして2009年も同様の見通しです。しかし私達は、まずまずの価格で買える限りは、質の高い仲介事業会社の買収を継続していくつもりです。  以下には、ミッドアメリカン社の事業におけるいくつかの重要な数字を示しています。 (画像を参照)  ミッドアメリカン社の規制公益電力事業と天然ガスパイプライン事業における記録は本当に傑出しています。これからそう述べる根拠をいくつかお見せします。  当社の2つのパイプラインであるカーン・リバーとノーザン・ナチュラルは共に2002年に買収されました。マスチオと呼ばれる会社が毎年、パイプライン会社の顧客満足度を格付けしていました。格付けされた44社の中で、私達がカーン・リバーを買収した時点で同社は9位であり、ノーザン・ナチュラルは39位でした。そこには課題が多くありました。  マスチオの2009年の報告書によると、カーン・リバーは1位であり、ノーザン・ナチュラルは3位でした。チャーリーと私はこの成果をこの上なく誇りに思います。これは各々の事業において、何百という人々が会社の新しい文化に献身し、その献身を継続したことによるものです。  公益電力事業における達成も同じくらい感銘を与えるものでした。1995年、ミッドアメリカン社はアイオワ州での主要な電力供給者になりました。綿密な計画と効率性の追求によって、同社は当社による買収以来、電力料金価格を変更しておらず、さらに2013年まで料金価格を維持することを約束しています。  ミッドアメリカン社はアイオワ州を風力による発電容量の占める比率を全州の中で第1位にする一方で、この驚くべき価格安定性を維持してきました。当社による買収以来、ミッドアメリカン社の風力発電設備はゼロから総発電容量のほぼ20%にまで成長しました。  同様に、2006年にパシフィコープを買収した時、私達は風力発電事業を拡大すべく積極的に動きました。風力発電容量はその時33メガワットでした。それが今では794メガワットになっており、今後もさらに増加していく見込みです(パシフィコープと合流した時、私達は違う種類の「風」に気づきました。同社は98の頻繁に開かれる委員会がありました。それが今では28になっています。一方で、同社は従業員を2%減らしながら更に発電量を増やし、供給しています)。  2008年だけで、ミッドアメリカン社は2つの事業での風力発電に対して18億ドルを費やしており、今日では同社は風力発電容量の所有という点で全米の規制された公益事業会社の中で第1位になっています。ところで、その18億ドルと、パシフィコープ(上の表には「西部」として表示しています)およびアイオワ州での税引き前利益である11億ドルを比較してみてください。当社の公益事業部門においては、サービスを提供する地域の需要を満たす為に、稼いだ資金を全て同じ事業につぎ込み、更に(借入による資金を)いくらかつぎ込んでいます。実際、ミッドアメリカン社はバークシャーが同社を2000年の初めに買収して以来、全く配当を支払っていません。その代わりに、同社の利益は私達の顧客が必要とし、望んでいる公益システムを開発する為に再投資されてきたのです。それと引き換えに、私達は巨額の投資に対して適切な利回りの利益を得ることが出来ているのです。これは全ての関係者にとって素晴らしいパートナーシップです。                       ************ この章の前半部分はここまでです。 また、前の記事の感想にも書きましたが、 安定的な収益を上げつつ、まずまずのリターンで大規模資本の投下が可能となる公益事業は バークシャーにとって年々その存在が高まってきているように思えます。 それを強く感じたのが、今年の事業部門別の紹介の順序では これまで常に最初に来ていた保険事業を押しのけて、 この規制公益事業が先頭になったということです。 もちろん、今後もバークシャーにとって保険事業が中核となるのは確かでしょうが、 流れ込み続ける資金の投下先をどうするかという問題について バフェット氏が頭を悩ませているのも発言の端々から感じられるように思えます。 ミッドアメリカン社の規制公益事業は、そういった問題をわずかなりとも解消してくれる (すなわち、稼ぎ出す巨額の利益を同じ事業に有効に再投資できる) 数少ない業界の一つなのではないかと思います。 (続く)

2008年版バフェットの手紙(3)

ウォーレン・バフェット氏がバークシャー・ハザウェイの株主にあてて書いた今年の手紙の翻訳記事、今回は第3段落です。 ※原文は下記のリンクから読むことが出来ます。 2008年版アニュアルレポート →http://www.berkshirehathaway.com/2008ar/2008ar.pdf 2008年版会長の手紙 →http://www.berkshirehathaway.com/letters/2008ltr.pdf ****************************************************************** 指標  バークシャーは大きく分けて2つの価値を持っています。その1つ目は当社の投資資産、すなわち株式、債券、現金同等物です。年末時点でこれらの合計は1,220億ドルになります(当社の金融および公益事業部門で保有する投資資産は勘定に入れていません。これらは2つ目の価値に配分しています)。その合計額のうち約585億ドルは当社の保険事業のフロートによって資金供給されています。  バークシャーの2つ目の価値の構成要素は投資および保険事業以外の収益源から上がる利益です。これらの利益は96ページ(訳注:同社のアニュアルレポート内のページ)に記載されている当社の67の非保険事業会社群からもたらされています。保険事業の利益はこの計算からは除いています。なぜなら保険事業の価値はそれが生み出す投資可能な資金から来るものであり、この要素は既に1つ目の価値に含まれているからです。  2008年中に、バークシャー1株当たりの投資額は(少数株主持分控除後で)90,343ドルから77,793ドルまで低下しました。この下落は市場価格の低下に起因するものであり、株式または債券の正味売越しに因るものではありません。当社の2つ目の価値はバークシャー1株当たり、税引き前で4,093ドルから3,921ドルまで(同様に少数株主持分控除後)下落しました。  これらのパフォーマンスはいずれも満足のいくものではありませんでした。長期間でみて、私達がバークシャーの内在価値を許容できるペースで増加させていこうとするならば、上述の両方の区分のそれぞれについて、まずまずの増加が必要になります。しかし、この先、私達は過去2、30年間そうであったように、利益の区分に焦点を合わせていくでしょう。私達は過小評価された有価証券を買うのが好きですが、事業会社をまるごと適正価格で買う方が更に好きなのです。  さて、それではバークシャーの4つの主要な事業部門について見てみることにしましょう。これらはお互いに非常に異なったバランスシートと損益勘定の性質を持っています。それゆえ、これらを標準的な財務諸表がそうするようにひとまとめにしてしまうことは、分析を困難にしてしまいます。ですから、チャーリーと私が眺めているように、これらを4つのばらばらの事業としてお見せすることにします。 ****************************************************************** バフェット氏は手紙の中で、数年前からバークシャーの価値を計るための2つの指標として、 株式・債券などの投資資産の額と、保険以外の事業から得られる税引き前利益の額(いずれも1株当たりの数値)を示してきました。 また、それらの数値の4〜5年間隔での成長の軌跡も提示していました(今年はその表はありませんでしたが)。 今や多数の事業や投資からなるバークシャーの全貌を理解するのは難しいことですが、 それを最もシンプルな形に切り分けて株主に提示しているのは バフェット氏らしいシンプルかつ的を射た物事の捉え方だと思うと同時に、 株主に対して誠実な説明を心がけようという思いが感じられました。 次回からは、バークシャーの4つの大きな事業部門について個別の概況説明が行なわれていきます。 (続く)

2008年版バフェットの手紙(2)

バークシャー・ハザウェイ社の2008年版アニュアルレポートの中で、 ウォーレン・バフェット氏が同社の株主にあてて書いた手紙の翻訳記事の続きです。 ※原文は下記のリンクから読むことが出来ます。 2008年版アニュアルレポート →http://www.berkshirehathaway.com/2008ar/2008ar.pdf 2008年版会長の手紙→http://www.berkshirehathaway.com/letters/2008ltr.pdf 2008年のバークシャー  昨年、バークシャーの事業のほとんどは経済に大きく影響を受け、その潜在能力以下の利益しか上げられませんでした。そしてそれは2009年においても同様でしょう。当社の小売事業は住宅建設に関連する事業と同様、特にひどく影響を受けました。しかしながら、全体としては、当社の製造、サービス、小売事業部門はかなりの利益を上げ、そしてその多くは――特に比較的大きな事業は――その競争上の地位を引き続き強化しました。さらに、幸運にも、バークシャーの2つの最も重要な事業――保険事業と公益事業グループ――は全体経済のそれとは無関連に利益を生み出してくれました。いずれの事業も2008年においては傑出した結果を残し、そして今後の展望も素晴らしいものです。  昨年の報告書で予言した通り、当社の保険事業が2007年に実現した例外的な保険引受け利益は2008年には再現されませんでした。それでも、保険事業グループは6年連続で保険引受け利益を上げました。これは当社の585億ドルの保険“フロート(滞留資金)”――当社のものではありませんが当社が保有し、そして当社自身の利益の為に投資しているお金――に対してゼロ以下のコストしか、かからなかったことを意味します。実際に、当社は2008年の間フロートを保有することに対して28億ドルを支払われたのです。チャーリーと私はこれを楽しいことだと思います。  長い期間でみれば、ほとんどの保険会社はかなりの保険引受け損失を経験し、その為にこの業界の経済的特性は当社のそれとはずいぶん異なったものになっています。もちろん、当社もこの先には保険引受け損失を経験する年があるでしょう。しかし当社には保険事業における最高の経営者集団がおり、そしてほとんどのケースでは、彼らは強固かつ価値あるフランチャイズを目の前に見ています。これらの強みを考えた上で、私は当社がこの先も長期間でみれば保険引受け利益を上げ、そしてそれゆえ当社のフロートにはコストがかからないであろうと信じています。バークシャーの中核事業である保険事業は、経済上の発電所なのです。  チャーリーと私は当社の公益事業についても等しく熱狂的になっています。この部門は昨年、過去最高益を上げ、それは将来の利益の為に使われました。この事業の経営陣であるデーブ・ソコルとグレッグ・アベルは、公益事業業界のどの会社も適わない結果を達成しました。私は彼らが新しい事業計画を持ってやってくるのを喜ばしく思います。なぜならこの資本集約的な事業においては、新規事業はしばしば巨大なものとなるからです。そのような計画はバークシャーにかなりの資金をまずまずのリターンで投資する機会を提供してくれるのです。  昨年は資本配分の側面においてもまた、上手く事が運びました。バークシャーはいつも企業と証券の双方の買い手であり、そして市場の混乱は私達の買い付けに追い風となってくれます。投資においては、悲観主義はあなたの友であり、楽観主義はあなたの敵なのです。  当社の保険会社のポートフォリオにおいて、私達は通常の市場では不可能な、3つの大きな投資を行いました。これらはバークシャーの年間利益を税引き前で約15億ドル増やすことになり、そして将来キャピタルゲインを得る機会も提供してくれます。私達はまた、マーモン社の買収手続きを完了しました(当社は現在、同社の64%を所有しており、そして残りの株式をこの先6年かけて買っていく予定です)。加えて、当社の子会社数社は、その競争上の地位および利益を強化するであろう、「おいしい」買収を行いました。  以上は良い知らせです。しかしもう1つ、あまり喜ばしくない事実があります。2008年の間、私はいくつかの愚かな投資を行ってしまいました。私は少なくとも1つの大きな取引の失敗を犯しましたし、そしてそれよりは小さいがやはり損をするような取引をいくつか犯してしまいました。これについては後で詳しくお伝えします。さらに私は、自分の考えを再検証し、速やかに行動を起こすべきであるような新たな事実が分かった時に親指をしゃぶって見過ごすという過ちをいくつか犯しました。  加えて、私達が保有し続けている債券と株式は、市場全体とともに相当の市場価格の下落を被りました。このことについてはチャーリーと私は悩んでいません。実際のところ、私達はそのような価格の下落は、我々の持分を増やせる余裕資金があるのであれば、楽しんでいるのです。ずっと前に、ベン・グレアムは私に「価格とは、何かを買うときに支払うもの、価値とは、何かを買うときに手に入れるもの」と教えてくれました。靴下と株式のどちらについてであっても(訳注:”socks”と”stocks”をかけたダジャレです)、私は質の高い品物をバーゲンセール価格の時に買うのが好きなのです。 ****************************************************************** この章では昨年1年間のバークシャーの活動を総括しています。 同社の有する多数の保険事業が生み出すフロート(滞留資金)がバークシャーの成長の源泉になっているのは有名な話ですが、 近年もう一つの大きな事業の柱として、電力やガスなどの規制公益事業のウェイトが大きくなってきている様です。 増え続ける資金とは反対に、バークシャーにとって十分な規模の魅力的な投資対象がますます見つけづらくなってきている中で、 公益事業は安定した収益をあげ、大規模の投下資本に対して「ほどほどの」リターンを得られる数少ない対象になっているのかも知れません。 (続く)

2008年版バフェットの手紙(1)

2月28日に、バークシャー・ハザウェイのアニュアルレポートと バフェットが株主にあてて毎年書いている「会長の手紙」が公開されました。 ※原文は下記のリンクから読むことが出来ます。 2008年版アニュアルレポート →http://www.berkshirehathaway.com/2008ar/2008ar.pdf 2008年版会長の手紙→http://www.berkshirehathaway.com/letters/2008ltr.pdf バークシャーのホームページ上で公開されている手紙は全て読んでみましたが、 一般人には難解なこともあるはずの様々な投資案件や事業概況を分かりやすく、 時にはユーモアを交えながら語りかけてくるバフェット氏の手紙は、一読の価値はあると思います。 そこで、今年のバフェットの手紙の全訳に挑戦してみたいと思います。 かなりの長文になってしまう為、複数回に分けて記事にしていきます。 日本語訳が冗長で分かりづらい箇所も多々あるかと思いますが、どうかご容赦下さい。 それでは、どうぞ。 ****************************************************************** バークシャー・ハザウェイの株主の皆様へ:  2008年中の当社の純資産の減少額は115億ドルとなり、それによって当社のクラスA株式とクラスB株式の両方の1株当たり簿価は9.6%減少しました。過去44年間で(すなわち、現在の経営陣が経営権を取得して以来)、1株当たり簿価は19ドルから70,530ドルまで増加し、年複利20.3%で成長したことになります。  前のページの表は(訳注:「会長の手紙」の1ページ目参照)過去44年間のバークシャーの簿価、及びS&P500種指数のパフォーマンスを記録したものですが、この表は両者にとって2008年は最悪の年であったことを示しています。この期間は企業発行債券や地方自治体発行の債券、不動産やコモディティにとっても同様に悲惨な時期でした。年末まで、どんな対象への投資家も血まみれ混乱しており、まるでそれはバドミントンの試合の最中に迷い込んだ小鳥のようなものでした。  年が進行するにつれ、世界に名を轟かせていた巨大金融機関の多くの存続が危ぶまれる問題が次々と明らかになっていきました。この問題は信用市場の機能不全を招き、その中でも重要な部分はすぐに機能停止に陥りました。国中の合言葉は私が若い頃にレストランの壁で見た次のような信条になりました。「我々は神を信じている。そうでない人達は全員、お金を払ってくれ。」  第4四半期までに、信用危機は住宅と株式の価格の暴落も伴って、国中を飲み込む、人々を呆然と立ち竦ませるような恐怖を生み出しました。企業活動の急激な落ち込みが、私も未だかつて体験したことのない加速度で生じました。米国――そして世界の大部分の国々――は強烈な負の方向へのサイクルに陥ってしまいました。恐怖が商取引を先導し、そしてそれが更に大きな恐怖を招いたのです。  この負のスバイラルにより、政府は大きな行動に出ることを余儀なくされました。ポーカー用語で言えば、財務省と連邦準備制度理事会は「オール・イン」になっています。以前にはカップ1杯分で足りていた経済上の治療薬は最近では樽1杯分も処方されています。このかつては考えられなかった処方量はほぼ確実に望ましくない副作用をもたらすでしょう。その正確な作用は推測の域を出ませんが、あり得そうな結果の一つとしてはインフレの急進が挙げられます。さらに、主要な産業群は政府の補助に依存してきていますが、その後には頭を抱えてしまうような要求をひっさげた市や州が続くことになるでしょう。これらの法人・行政体を公共の乳首から引き離すことは政治的な挑戦になるでしょう。それらは自らすすんで離れようとはしないでしょう。  負の側面が何であれ、金融システムの完全な崩壊を避けようとするならば、昨年の政府による強力かつ迅速な行動は不可欠なものでした。もしそれが起こっていれば、私達の経済全域にもたらされる結果は想像を絶する悲惨なものとなっていたでしょう。好むと好まざるとに関わらず、アメリカのウォール街、中心街、そして横通りの住人達は皆、同じボートに乗っていたのです。  しかしこの悪いニュースはともかく、私達の国は過去、さらに悪い災厄に直面してきたことを忘れないで下さい。20世紀の間だけみても、私達は2つの大戦(そのうちの1つは初めの頃、負けそうになっていました)、1ダースあまりもの金融パニックと景気後退、1980年にはプライム・レートが21.5%にまでなった凄まじいインフレーション、そして失業率が何年もの間15%から25%の間で推移した1930年代の大恐慌、に遭ってきました。アメリカは挑戦という点において一切の不足はなかったのです。  しかし例外なく、私達はそれらを乗り越えてきました。それらの――そしてその他多くの――困難に直面しながら、アメリカ人の実質的な生活水準は1900年代の間に7倍近くも向上し、その間にダウ工業平均株価は66ポイントから11,497ポイントまで上昇しました。この期間の記録を、人類の生活水準という点では、たとえあったにしてもごくわずかな向上しか得られなかった何ダースもの世紀と比較してみてください。その道のりは平らではなかったものの、私達の経済システムはこの期間、極めて上手く機能してきたのです。それは他のどのシステムもなしえなかったほど、人類の潜在能力を解放してきており、そしてこれからもそれは継続するでしょう。アメリカの最高の時代は目の前に広がっています。  2ページの44年間の成績表をもう一度見てみましょう。これらの年度の75%において、S&Pの株式は上昇を記録しました。私はこの先44年間においても、おおよそ近い割合の年度において上昇を記録するのではないかと推測します。しかし、バークシャーを運営する上でのパートナーであるチャーリー・マンガーも私も、株価が上昇する年と下落する年を前もって言い当てることは出来ません(我々のいつもの客観的な視点からみれば、他の誰一人としてそれが出来るとは思いません)。たとえば、私達は経済が2009年を通じて沈降するだろうと確信を持って言えますし――そしてこの点に限れば、恐らくそれ以後もさらにそうなるでしょう――しかし、その結論は私達に株式市場が上がるか下がるかといったことは教えてくれないのです。  良い年も悪い年も、チャーリーと私は以下の4つの目標に焦点を合わせています。 (1) 巨額の余剰流動性、わずかな短期債務、何ダースもの利益および現金の発生源を有していることから形成されるバークシャーのジブラルタル(難攻不落の要塞)の様な財務力を維持すること (2) 当社の事業子会社群に持続的な競争優位性をもたらす、「堀」を広げること (3) 新しい、そして様々な収益源を獲得、発展させていくこと (4) 何年もの間バークシャーに並外れた結果をもたらしてきた、傑出した事業経営者達の集団を育成し、拡大していくこと ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ※この報告書の中で用いられている1株あたりの数値は全てバークシャーA株に適用されるものである。B株についての数値はA株についての数値の1/30である。 ****************************************************************** 最初の段落は以上です。 さすがのバフェット率いるバークシャーも、昨年は当期利益、純資産とも落ち込んでしまいました。 この段落では厳しい状況を直視しながらも、過去にもアメリカは同じかそれ以上の困難を乗り越えてきたと、読む人を元気づける言葉を述べています。 まだまだ先は長いですが、お付き合い下さい。(続く)

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