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  • 2015.08.31 Monday
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SBI、SBIフューチャーズを完全子会社化へ

本日、SBIホールディングスの決算発表でしたが、 それと共に、連結子会社であるSBIフューチャーズを株式交換により 完全子会社化するというIRが発表されていましたね。 https://www.release.tdnet.info/inbs/140120090427067493.pdf IRによると、今年の7月28日付でSBIフューチャーズ1株につき SBIホールディングス3株を交付して完全子会社化し、 同7月31日付でフューチャーズの商品取引受託業務を廃止するとのことです。 フューチャーズのオンライン外国為替取引事業はグループ内で事業承継させる意向のようですが、 同社の収益の99%超を占める商品取引受託業務を廃止するということは、実質的に清算といっていいと思います。 事業環境悪化で3期連続の赤字を出し歯止めがかからないことから、 完全に手遅れになる前に廃業して資金の流出を食い止め、 回収可能な資本があれば回収しようということなのでしょう。 問題は株式交換比率がどうなのか?ということです。 IRによると、両社はそれぞれ第3者機関に交換比率の算定を依頼し、 SBI株式については市場株価法、 SBIフューチャーズ法については事業継続を前提としないことから 時価純資産法と修正簿価純資産法を用いた結果、 概ね1:3前後の比率に収まった様です。 SBIが取得するSBIフューチャーズの未保有分株式は7,680株なので SBIが対価としてSBIフューチャーズ株主に交付する株式は23,040株。 (※SBI株式は全て自己株式から充当するとのことです) まずは単純に時価で比較してみると(4月27日時点での両社の株価終値)、 SBI株 3株:36,030円 23,040株:276.71百万円 SBIフューチャーズ株 1株:25,000円 7,680株:192百万円 となっていて、大きなスプレッドが存在しています。 もっとも、このスプレッドは明日以降、すぐにサヤ寄せしてしまうでしょうけど・・・。 また、3月31日時点での簿価で見てみると SBIが対価として支払う自己株式の簿価が約484〜6百万円 SBIが取得するSBIフューチャーズの純資産(簿価)が約276.47百万円 となります。 まあパッと見た限りでは、現時点での市場価格と簿価を見た限りでは フューチャーズの株主の方が有利に思える比率です。 それに単体では継続も危ぶまれるフューチャーズと、現状厳しいとはいってもグループの収益の柱であるSBIキャピタルやSBI証券、まだ立ち上げたばかりで累損ですが順調に収益を伸ばしている住信SBIネット銀行などの事業群を内包しているSBIとではどちらが内在価値があるかは明らかだと思います。 とはいえ、フューチャーズ上場後の株価推移は悲惨なものがありますから、 ここでもっと低いプレミアムで完全子会社化していたとしたら少数株主保護の観点から問題ありとも言えます。 それに上でも書きましたけれど、このまま放置すればフューチャーズの株式が紙くずになる恐れがあるのであれば、完全子会社化して実質廃業というのはSBI本体にとってもフューチャーズ株主にとっても恐らく最善なのでしょう。(不幸中の幸いというか、今回はSBI株式の価値が希薄化するにしてもごくわずかで済みます) 余談ですけれど、フューチャーズを2万円割れで買って今も持っている人は美味しいですねえ。 何しろ、底値の15,000円付近で買っていたとしたら、 SBI株を約5000円で手に入れられる訳ですから! ※以上は全て僕個人の私見を独断と偏見で述べたものです。 この記述に基づく投資行動で損失を被ったとしても、当方は一切の責任を持ちません。 投資の判断は全て各自が自己責任で行なって下さい。

2008年版バフェットの手紙(11)-2【最終回】

ウォーレン・バフェット氏が毎年、バークシャーのアニュアル・レポートの中で 株主にあてて書いている手紙の2008年版、その翻訳記事の続きです。 ※原文は下記のリンクから読むことが出来ます。 2008年版アニュアルレポート →http://www.berkshirehathaway.com/2008ar/2008ar.pdf 2008年版会長の手紙 →http://www.berkshirehathaway.com/letters/2008ltr.pdf 今回はとうとう最終回。 バークシャーの株主総会についての章の続きです。 株主総会のメインイベントとなっている、株主からの質問にバフェット氏とマンガー氏が答える「質疑応答タイム」の進行方法が今年から変更になるようです。 ******************************************************************                         ************  今年は、株主総会での質疑応答時間の進行方法を大きく変える予定です。近年、私達はバークシャーとその事業に直接関連のある質問を、ほんの一握りしか受けませんでした。昨年はそういう質問は実質的に一つもありませんでした。ですから、私達は討論をバークシャーのビジネスについてのものへと戻すよう軌道修正する必要があります。  関連した問題の中に、午前7時に開扉するなり、質問者用の12個のマイクに真っ先に並ぼうとする人達を先頭に、狂ったような突進が起こっていました。このことは安全上の見地から望ましくありませんし、私達は短距離走の能力が誰が質問をするかの決定要素であるべきだとも思いません(78歳にして、私は足の速さが過大評価された才能であるという結論に至りました)。ここもまた、新しい方法が望ましいでしょう。  一つ目の変更として、代表的な新聞や雑誌、テレビといった機関から数人の金融ジャーナリストが質疑応答時間に参加し、チャーリーと私に、株主がEメールで送って来た質問を訊ねることにします。このジャーナリストとEメールアドレスは以下の通りです。キャロル・ルーミス、フォーチュン誌、cloomis@fortunemail.com;ベッキー・クイック、CNBC、BerkshireQuestions@cnbc.com;アンドリュー・ロス・ソーキン、ニューヨーク・タイムズ誌、arsorkin@nytimes.com。送られてきた質問の中から、それぞれのジャーナリストがもっとも興味深く、重要だと判断した質問を1ダースあまり選びます(Eメールを送る際には、あなたの質問が選ばれた場合、あなたの名前を出しても良いかどうかジャーナリストに分かるよう明記して下さい)。  チャーリーも私も、訊ねられる質問についての手がかりは全くもらえません。私達はジャーナリスト達がタフな質問をいくつか選んで来ると知っていますし、それは私達の望むところです。  二つ目の変更として、自分で質問をしたいと希望する株主の為に、各マイクについて、8時15分から抽選を行ないます。株主総会では、ジャーナリストからの質問と抽選で選ばれた株主からの質問とを交互に行なっていきます。従って、少なくとも質問の半分は――皆さんが送る質問の一団から選ばれるものは――確実にバークシャーに関連するものとなります。私達はその一方で、観衆の中からの良い――ことによると愉快な――質問にも引き続きお答えしていきます。  それでは、私達の資本主義者のためのウッドストックに参加し、私達にこの新しい方式が気に入ったかどうかを知らせて下さい。チャーリーと私は皆さんにお会いするのを心待ちにしています。 2009年2月27日               ウォーレン・E・バフェット                        取締役会長 ****************************************************************** 近年のバークシャー株主総会での質疑応答が バークシャーのビジネスとは関係のないものになっていた、というのは、 この間、日本語版が出版された『バフェットの株主総会』 http://www.amazon.co.jp/%E3%83%90%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%AE%E6%A0%AA%E4%B8%BB%E7%B7%8F%E4%BC%9A-%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BA/dp/4767808197/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1240047052&sr=8-1 の中で著者のジェフ・マシューズが指摘していました。 やはりこの点については他ならぬバフェット氏も危惧していたようで、 あらかじめ金融ジャーナリスト宛に株主から質問を送ってもらい、 バークシャーのビジネスに関連のある質問だけを総会で質問してもらう という形式に変更するようです。 質問の内容については、バフェット氏もマンガー氏も一切事前に知らされることはない、というのはこれまでの形式と同じであり、公平なやり方になっています。 その一方で、質問の半数は従来通り会場に来た株主からの質問も受け付けるという点は バフェット氏の株主への配慮の表れ(過去の総会で、ビジネスと関係ない質問をした株主達を否定しないという意味で)とも感じられました。 これで2008年版バフェットの「バークシャー・ハザウェイ株主への手紙」の全文和訳は終わりです。 バフェット氏が30年以上にわたってバークシャー・ハザウェイの会長として毎年アニュアル・レポートの中で書いている株主への手紙は、同社のホームページ(http://www.berkshirehathaway.com/letters/letters.html)から原文を読むことが出来ます。 また1996年までの手紙の内容は、 『バフェットからの手紙(ローレンス・A・カニンガム編著、増沢浩一・監訳、PanRolling社)』 http://www.amazon.co.jp/%E3%83%90%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E6%89%8B%E7%B4%99-%EF%BC%8D-%E3%80%8C%E7%B5%8C%E5%96%B6%E8%80%85%E3%80%8D%E3%80%8C%E8%B5%B7%E6%A5%AD%E5%AE%B6%E3%80%8D%E3%80%8C%E5%B0%B1%E8%81%B7%E5%B8%8C%E6%9C%9B%E8%80%85%E3%80%8D%E3%81%AE%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%AB-%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B9-%E3%82%AB%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%A0/dp/4939103218/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1240047221&sr=1-1 として日本語版も出版されています。 その後、1997年〜2006年までの手紙をカバーした改訂版も、原書では既に出版されているようです。 今回、その最新版をより多くの日本人にタイムリーに近い形で 読んでもらえたら、と思って挑戦し、何とか最後まで訳し終えることが出来ました。 また自分で読むだけではなく、日本語訳文を書いてみることで あいまいだった理解が鮮明になるなど、得るものも多くあった気がします。 ここまで長文にも関わらず読んで下さった方々、お疲れ様です。 そして、ありがとうございました。 (了)

2008年版バフェットの手紙(11)-1

ウォーレン・バフェット氏が毎年、バークシャーのアニュアル・レポートの中で 株主にあてて書いている手紙の2008年版、その翻訳記事の続きです。 ※原文は下記のリンクから読むことが出来ます。 2008年版アニュアルレポート →http://www.berkshirehathaway.com/2008ar/2008ar.pdf 2008年版会長の手紙 →http://www.berkshirehathaway.com/letters/2008ltr.pdf 今回はいよいよ最終章、もはやバークシャー名物となっているオマハでの株主総会の案内です。 出来れば1つの記事に収めたかったのですが、文字数制限を超えてしまったので2つに分けることにします。 ****************************************************************** 年次株主総会 今年の当社の株主総会は5月2日(土)に開かれる予定です。いつものように、クェストセンターは午前7時に開扉し、新しいバークシャーの映画が8時30分から上映される予定です。9時30分からそのまま質疑応答の時間に入り、(クェスト内のスタンドでの朝食休憩を挟んで)午後3時まで続けます。その後、小休憩を挟んで、チャーリーと私は株主総会を3時15分から招集します。もしその日の質問時間中に席を離れると決めたのでしたら、どうかチャーリーがしゃべっている間にそうして下さい。  もちろん退席する最高の理由は、買い物に行くことです。私達は総会会場に隣接する19万4300平方フィートのホールをバークシャー子会社の製品で埋め尽くして、それを手助けしようと思います。昨年、株主総会に来場した31,000人の人々は各々の役目を果たし、ほぼ全ての場所で売上記録を樹立しました。しかし皆さんはもっとやれるはずです(これは友好的な警告です:もし売れ行きが悪いことに気づいたら、私は出口を施錠します)。  今年は、クレイトンはショウ(※訳注:同じくバークシャー子会社のショウ・インダストリーズ社)のフローリング、ジョンズ・マンビルの絶縁材、ミテックの留め具を使用した新しいi-houseを展示する予定です。この革新的な「グリーン(※訳注:環境にやさしい)」住宅は、太陽電池パネルやその他多くの省エネルギー製品を備えており、まさに未来の住宅といえます。この住宅がオマハのような地域に設置された場合、電力と暖房にかかる概算コストは、1日当たりわずか約1ドルです。このi-houseを購入したら、次は傍に展示してあるフォレスト・リバーのRV(レクリエーショナル・ビークル)とpontoon boat(訳注:組み立て式の手漕ぎゴムボート)の購入も考えるべきです。あなたの隣人を嫉妬させて下さい。  ガイコは国中から大勢のトップ・カウンセラーを揃えたブース設けて、全員が皆さんに自動車保険の見積もりを提供する用意が出来ています。ほとんどの場合、ガイコは株主割引価格(通常8%)を提供することが出来ます。この特別価格の提供は私達が営業を行っている50の管轄区域のうち、44の区域で許可されています。(一つ補足事項があります:この割引は他の割引、たとえばある団体割引などの資格を持っている場合には付加することが出来ません。)あなた方の既存の保険の詳細情報を持参して、私達があなたのお金を節約出来るかどうか調べてみて下さい。最低でも皆さんの中の50%については、それが可能だと信じています。  土曜日、オマハ空港では、皆さんによく見てもらえる様、例年通りネットジェットの飛行機を陳列する予定です。クウェスト内のネットジェッツ社のブースで立ち止まって、これらの飛行機の見方について学んで下さい。オマハにはバスで来て下さい、そして帰りはあなたの新しい飛行機で帰って下さい。そして、キクト(※訳注:バークシャー子会社のスコット・フェッツァー・グループの内の1社)の子会社の展示会で買ったギンスナイフを――中身を出して見るのを怖がらないで――持ってみて下さい。  次に、もしまだお金が残っていれば、ブックワームに行ってみて下さい。そこでは約30種類の本とDVDを販売しています。知識への渇望が持ち運べる荷物の量を超えてしまった方のために、郵送サービスもご利用いただけます。  最後に、展示会場には過去からやって来た1台と、未来からやって来た1台を含む、計3台の魅惑的な自動車を設置する予定です。当社子会社TTIのCEOであるポール・アンドリュースが、かつては、リグレー社の買収における私達の新たなパートナー達の母および祖母であるフォレスト・マーズ・シニア氏夫人の所有物であり、現在は彼が所有する1935年版デューセンバーグを持ってきてくれます。未来の一台は当社が10%の持分を有する驚くべき中国企業であるBYDが開発した、新型のプラグイン電気自動車です。  この報告書と共に同封されている株主総会召集通知の添付プリントには株主総会やその他のイベントへの参加に必要な入場証の入手方法の説明が書かれています。飛行機、ホテルそしてレンタカーの予約については、私達は皆さんへの特別な手助けとして、今年もまたアメリカン・エクスプレス(800-799-6634)と契約しました。これらの問題を統括しているキャロル・ペンダーソンは、毎年素晴らしい仕事をしてくれており、私は彼女にそのことを感謝しています。ホテルの部屋は見つけるのが困難でしょうが、キャロルと共に探せば、きっと見つけられるでしょう。  ドッジ通りとパシフィック通りの間の72番街に77エーカーの敷地を構えるネブラスカ・ファニチャー・マートは今年もまた「バークシャーの週末」値下げセールを行ないます。私達はこの特別イベントを12年前に始め、そして「週末」の間の売上は1997年の530万ドルから2008年の3330万ドルまで成長しました。その週末の土曜日には、1日の売上記録720万ドルを達成しました。どの小売業者にでもいいので、そのような売上高をどう思うかきいてみて下さい。  バークシャーの割引を受ける為には4月30日(木)から5月4日(月)までの期間中に買い物をする必要があり、また株主総会への入場証を提示する必要があります。期間中の特別価格は、普段は割引に対して非常に厳格なルールがあることで有名な製造業者の製品にまで適用されます。彼らは私達の「株主の週末」の精神に則って、皆さんの為に例外を設けてくれたのです。私達は彼らの協力に感謝しています。NFMは月曜日から土曜日までは午前10時から午後9時まで営業しており、日曜日は午前10時から午後6時まで営業しています。今年の土曜日には、午後5時30分から8時まで、NFMで西部式の屋外パーティが催され、皆さんはどなたでもご参加頂けます。  ボーシャイムズ(※訳注:バークシャー子会社の宝石店)では、再び2つの株主限定イベントを催します。1つ目は5月1日(金)午後6時から10時までのカクテル・レセプションです。2つ目は、メインの祝祭が5月3日(日)午前9時から午後4時まで催されます。土曜日は、午後6時まで営業しています。  ボーシャイムズでは週末の間はずっと、大変な混雑が予想されます。ですから、皆さんの便宜をはかって、4月27日(月)から5月9日(土)まで株主優待価格でご購入いただけるようにしています。その期間中は株主総会への入場証、またはあなたがバークシャーの株主であることが分かる売買取引明細書を提示して身分証明をして下さい。  日曜日、ボーシャイムズの外のモールでは、過去2度全米チェス王者に輝いたパトリック・ウォルフが目隠しをして、希望する来訪者どなたとでも――その人達は目を大きく開けたままです――6人同時に相手をしてくれます。その近くでは、ダラスから来た非凡なマジシャン、ノーマン・ベックが見物人を混乱させてくれます。さらに、日曜日の午後には世界最高のブリッジの達人の2人であるボブ・ハマンとシャロン・オズバーグが株主の方々とブリッジをプレイしてくれます。  ゴラッツ(※訳注:バフェットが長年お気に入りのステーキハウス)は再び、バークシャー株主の為だけに、5月3日(日)に営業してくれます。昨年ゴラッツでは、株主の為の日曜日に、240席の店舗で975食のディナーを給仕しました。3日間の合計は、通に好まれるメイン料理のTボーン・ステーキ702枚を含む、2,448食でした。どうか、フォアグラを注文して私を困惑させないで下さい。以下のことを忘れないで下さい:その日にゴラッツに入店する為には、予約をする必要があります。予約をとるには、4月1日に402-551-3733へ電話をかけて下さい(ただし、前日までにかけても予約は出来ません)。  私達は今年もまた土曜日の午後4時に、北米以外から来られた株主の方々の為の歓迎会を催します。毎年、私達の株主総会は世界中から多くの人々を引きつけており、そしてチャーリーと私ははるばるやって来た方々に個別に挨拶をすることをお約束したいと思います。昨年、私達は何十もの国からやって来た700人以上の方々とのご対面を楽しみました。アメリカとカナダ以外の地域からやって来られる株主は皆、この行事に参加するための特別な入場証と説明書を受け取ることになります。 ****************************************************************** 前半部分はバークシャー子会社の製品・サービスが購入できる、 株主総会会場に隣接したホールでのバザールの案内と、 株主総会前後の期間中に地元オマハにある子会社の店舗での株主優待セールやイベントについての案内です。 例年のことですが、バフェット氏がジョークを交えながら子会社の宣伝をして、 株主からもしっかり売上を上げている辺りは商魂逞しさを感じます。 今年変わった点といえば、昨年バークシャーが出資した、 チューインガムメーカーのリグレーや 中国の電池メーカーBYD関連の出展があることでしょうか。 どれもこれも面白そうなイベントでいつか参加してみたいですが、 近年では参加者が増えたおかげでどこもすごい混雑になっているようで、 ホテルや飛行機の予約を取るのも一苦労どころか二苦労、三苦労のようです。 アメリカ国内からでさえ、金持ちでない人はヒッチハイクなどでやってきて、 テント泊まりで参加している様子をYoutubeで見ましたし・・・・・・。 次回はいよいよ本当の最終回になります。株主総会での質疑応答の方法変更についての説明になっています。 (続く)

2008年版バフェットの手紙(10)-4

ウォーレン・バフェット氏が毎年、バークシャーのアニュアル・レポートの中で 株主にあてて書いている手紙の2008年版、その翻訳記事の続きです。 ※原文は下記のリンクから読むことが出来ます。 2008年版アニュアルレポート →http://www.berkshirehathaway.com/2008ar/2008ar.pdf 2008年版会長の手紙 →http://www.berkshirehathaway.com/letters/2008ltr.pdf 長かったデリバティブについての章も、今回が最後です。 今回は、前回でも少し触れられていたオプションなどの金融商品のフェア・バリューを計算するのに広く用いられているブラック・ショールズ式が、 長期間の契約の現在価値を評価するのには適していないことをわかりやすい例を用いて説明しています。 ******************************************************************  ブラック・ショールズ方程式は金融界における聖書のような地位に近づいてきており、そして当社ではそれを財務諸表作成上の目的で株式プット・オプションを評価する際に使用しています。その計算の際のカギとなる数値は、契約の満期期間とストライク・プライス(オプションの権利行使価格)、アナリストのボラティリティの予想値、金利そして配当金です。  しかしながら、方程式をより長い期間について適用すると、馬鹿げた結果が生み出されてしまう可能性があります。公平を期すために言いますが、ブラックとショールズはほぼ確実に、この点をよく理解していたでしょう。しかし彼らの献身的な信奉者達は、2人が初めてこの方程式を公表した時に付け加えた注意事項を全く無視しているのかも知れません。  ある理論を極端な例で試してみることはしばしば有効となります。そこで、私達がS&P500種のプット・オプションを、期間100年間、10億ドル、ストライク・プライスは903ポイント(2008年12月31日時点の同指数の水準)で売ったと仮定してみましょう。私達が結んだ長期の契約期間中のボラティリティの予想値を使用するとともに適切な金利と配当を想定すると、私達はこの契約に対するブラック・ショールズ方程式による「妥当な」プレミアムが250万ドルであると導き出せるでしょう。  そのプレミアムの合理性を判断するためには、私達はS&P指数が今から1世紀後に今日よりも低い値をつけているかどうかを査定する必要があります。確実に、その時のドルは現在の価値よりもごく小さな価値しかないでしょう(たった年率2%のインフレでも、100年後にはおよそ14セントの価値しかない計算になります)。したがって、このことは指数の額面価値を押し上げる要因になるでしょう。しかしながら、さらに重要なことは、100年間の留保利益は指数に含まれるほとんどの企業の価値を非常に大きく増加させるだろうということです。20世紀中、ダウ・ジョーンズ工業平均株価は約175倍になり、その主な要因はこの留保利益によっていたのです。  あらゆることを考慮した上で、私は100年の間に指数が下落する確率は1%よりもはるかに少ないと信じています。しかし、その数字を用いて、最も起こり得そうな下落――万一に起こるとすれば、ですが――が50%であると想定してみましょう。私達の契約についての数学的な損失の期待値は、500万ドルとなります(10億ドル×1%×50%)。  しかし私達が理論的なプレミアムの額である250万ドルを前払いで受け取っているなら、私達は損失の期待値を埋め合わせるために、わずか年複利0.7%で投資すればよいことになります。それ以上を上回る投資収益は全て私達の利益になるのです。100年間、金利0.7%でお金を借りてみたくはありませんか?  私の示した例を最悪のケースの観点から見てみましょう。私の想定が正しければ99%の確率で私達は何も支払わなくてよいでしょう。しかし残り1%の確率に当たるという最悪のケースでさえも――つまり、10億ドルの全額を失うと想定しても――私達の借入コストはわずか6.2%にしかならないのです。明らかに、私の想定がおかしいか、または方程式が不適切なのです。  私の極端な例においてブラック・ショールズ方程式によって示された馬鹿げたプレミアムは、方程式の中にボラティリティが含まれている事、そしてボラティリティはその株式が過去数日間、数ヶ月間、あるいは数年間でどれだけ揺れ動いたかで決定されるという事実によって引き起こされたのです。この測定基準は100年先のアメリカ企業の確率重みつきでの価値の範囲を見積もることとは関連がないのです(もしよろしければ、躁鬱気味の隣人から毎日農場の価格を入手し、それからこの変化し続ける価格から計算されたボラティリティを今から1世紀先のその農場の確率重みつきでの価値の範囲を予測する方程式の重要な要素として使うことを想像してみて下さい)。  歴史に基づくボラティリティは短期間のオプション価格を見積もるのには有用な――しかし絶対安全とはほど遠い――概念ですが、その実用性はオプションの存続期間が延びるにつれ、急速に減っていきます。私の意見では、ブラック・ショールズ方程式による当社の長期プット・オプションの現在の評価は当社の負債を過大評価しています。ただし、その過大評価の程度は契約が満期に近づくにつれ減少していくでしょう。  たとえそうであっても、私達は長期の株式プット・オプションに係る財務諸表上の負債を見積もる際には、ブラック・ショールズ方程式を使い続けていきます。この方程式は世間一般の通念となっており、私がどのような代わりの式を用いても、極端な疑念が生じてしまうでしょう。それはまったく理解できることです。難解な金融商品について自分勝手な価値評価をでっち上げているCEO達は、まず保守的な側の間違いをすることがありません。楽天主義者のクラブはチャーリーや私が加わりたくないものです。 ****************************************************************** バフェット氏のたとえ話は、毎回、論理的で分かりやすいです。 ある理論の有効性を確かめるには、極端な例を使ってみて、 その結果が『常識で考えて』妥当かどうかをみてみれば良いと述べています。 本文中で説明している様に、バフェット氏はブラック・ショールズ式は長期のオプションを評価するのに妥当ではないと考えているようですが、それでもこの方程式を使い続けると言っています。 重要なことはどの式を使うかではなく、前回までで説明していたように、 実質的なリスクを低く抑え、コントロール出来るかどうか、ということなのだと思います。 これでデリバティブについての章は終わりです。 次回はいよいよ最後の章、株主総会についての案内です。

2008年版バフェットの手紙(10)-3

ウォーレン・バフェット氏が毎年、バークシャーのアニュアル・レポートの中で 株主にあてて書いている手紙の2008年版、その翻訳記事の続きです。 ※原文は下記のリンクから読むことが出来ます。 2008年版アニュアルレポート →http://www.berkshirehathaway.com/2008ar/2008ar.pdf 2008年版会長の手紙 →http://www.berkshirehathaway.com/letters/2008ltr.pdf 今回も引き続き、デリバティブについての章です。 バークシャーで行なっているデリバティブ取引について、 その性質毎に4つに分類して、詳細に説明しています。 ******************************************************************  当社の契約は4つの大きなカテゴリーに分けられます。金融商品に興味を惹かれない方にはお詫びをしなければなりませんが、それらについて苦痛なほど詳細に説明をさせて頂きます。 ● 私達は昨年の報告書で取り上げた「エクイティ・プット」ポートフォリオをわずかに増やしました。当社の契約の中には15年で満期を迎えるものもありますが、その他については20年満期となっています。満期の際にプットの対象となっている指数が契約開始時点の数値を下回っていた場合、当社はカウンターパーティーに対して支払いをしなければなりません。どちらの取引者も期日より前に決済を選択することは出来ません。重要なのは最終日の価格のみです。 分かりやすい例として、私達が10億ドルで15年のプット・オプションを、S&P500指数がたとえば1300のときに売ったとしましょう。もし満期日にその指数が10%下がって1170だったら、私達は1億ドルを支払うことになります。もし1300より上なら、私達は何も支払う義務はありません。私達が10億ドルを失うためには、指数はゼロになる必要があります。同時に、プットの売りは私達に好きな様に投資に使うことの出来るプレミアムを――おそらく1億ドルから150億ドルほどでしょう――もたらしてくれます。 当社のプット契約は合計で371億ドル(現在の為替レートで)であり、4つの主要な指数に広がっています。それはアメリカのS&P500種、イギリスのFTSE100種、ヨーロッパのEuro Stoxx50種、そして日本の日経平均225種です。当社の契約は2019年9月9日に最初の満期を迎え、最後の満期日は2028年1月24日になります。当社は49億ドルのプレミアムを受け取っており、それを投資に使っています。その一方で満期日がはるか先である為、当社は一切の支払いをしていません。それにもかかわらず、当社はブラック・ショールズ方程式を用いて、年度末の負債として100億ドルを計上しています。この額は報告日ごとに毎回変化します。2つの財務項目――[この評価損失額である100億ドル]−[当社が受け取ったプレミアムの49億ドル]――は当社が報告したこの契約における51億ドルのマーク・トゥ・マーケット損失を意味しています。 私達はマーク・トゥ・マーケット会計を支持しています。しかし、後でブラック・ショールズ方程式がオプションに伴う負債額の見積もりをする際の標準となっているにも関わらず、長期間の様々な価値評価を行なうと奇妙な結果を生み出してしまうと私が信じている理由を説明したいと思います。 当社の契約について時々理解されていないことについて一点、触れておきます。私達が危険にさらされている371億ドルの全てを失うためには、4つの指数全ての株式が様々な満期日にゼロにならなければいけません。しかし、もしも――例えばですが――全ての指数が各契約の開始日時点から25%下落し、外国為替レートが現在と同じままであったとした場合、当社が支払い義務を負う事になるのは90億ドルで、2019年から2028年にかけて支払うことになります。契約開始日からそれらの日までの間、当社は49億ドルのプレミアムを保有し、それに対する投資収益を得ることが出来るのです。 ● 昨年の報告書の中で取り上げた2つ目のカテゴリーは、様々な高利回りの指数に含まれる企業の信用損失が生じた時、当社に支払いが要求されるデリバティブに関するものでした。当社の標準的な契約では100社を含み、5年間をカバーしています。当社は昨年、このカテゴリーのポジションをわずかに増やしました。しかし、もちろん、2007年末時点の帳簿上の契約は1年間満期に近づきました。全体では、当社の契約は現在2年4ヶ月の平均残存期間となっており、最初の満期日は2009年9月20日に訪れ、最後の満期日は2013年12月20日に訪れます。 年末までに、当社はこれらの契約に対して34億ドルのプレミアムを受け取り、5億4200万ドルの損失を支払いました。マーク・トゥ・マーケットの原則を用いて、当社は年末時点で30億ドルの将来の損失のための負債を記載しました。こうして当社はその時点で、支払い額及び将来損失の見積もり額の合計である35億ドルから当社が受け取った34億ドルのプレミアムを差し引いて求められる約1億ドルの損失を計上する必要がありました。しかし、当社の四半期報告書では、利益または損失の額は2008年第2四半期の3億2700万ドルの利益から同第4四半期の6億9300万ドルまで大きく振れてきました。 驚くべきことに、当社は昨年、これらの契約に対して私がこれらの契約を結ぶことを決断する時に使った見積もりよりもはるかに少ない、9700万ドルの支払いしかしませんでした。しかし今年は、大規模な倒産が急激に増えると共に、損失は鋭く加速度的に膨らむでしょう。昨年の手紙で、私はこの契約が利益を上げて満期を迎えると期待していると申し上げました。今では、景気後退が急速に深まっていくと共に、最終的な損失の可能性が増加して来ました。結果がどうであれ、皆さんにお知らせし続けるつもりです。 ● 2008年に当社は個々の企業に対する「クレジット・デフォルト・スワップ」の引受けを始めました。これは単純な信用保険で、私達がBHACで引き受けている保険と似ていますが、免税債券保険ではなく企業の信用リスクを引き受けているという点が違っています。 もし、XYZという会社が倒産し、そして当社が1億ドルの契約を引き受けていたとすると、当社はXYZ社の借金の価値の相対的な縮小度を反映した額を支払う義務を負うことになります(例えば、仮にその会社の債券が債務不履行に陥った後で30ポイントの値がついていたとすると、当社は7000万ドルの支払い義務を負うことになります)。典型的な契約では、当社は5年間四半期ごとに保険料の支払いを受け取り、その後当社の保険は切れることになります。 年末時点で当社は42の企業をカバーする40億ドルの契約を引き受け、それに対して当社は年間の保険料として9300万ドルを受け取りました。これは当社が契約した中で唯一、カウンターパーティー・リスクのあるデリバティブのビジネスです。当社からこの契約を買ったパーティーは、5年間にわたって当社に支払う義務のある四半期ごとの保険金をきちんと支払わなければいけません。当社はこのビジネスをこれ以上拡大しようとは思っていません。何故ならこの保護の買い手のほとんどは今や売り手に担保を差し入れるよう要求しており、そして当社はそのような取り決めには関わりたくないからです。 ● 顧客の要望に応えて、当社はBHACで引き受けているのと似た2、3の免税債券保険契約を引き受けましたが、それはデリバティブとして組成されました。この2つの契約の間の唯一の意味ある違いとは、デリバティブにはマーク・トゥ・マーケット会計が要求される一方で、BHACでは標準的な発生主義会計が要求されるという点です。 しかしこの相違はいくらか奇妙な結果を生み出します。デリバティブで保護された――事実上、保険がかけられた――債券は、大部分が国全体の債務であり、それについて私達は安心してみています。しかし、年末時点で、マーク・トゥ・マーケット会計によって当社はこれらのデリバティブ契約について6億3100万ドルの損失を計上する必要がありました。もし私達がBHACにおいて同じ債券を同じ価格で保証しており、保険会社に要求される発生主義会計を用いていたとすると、私達は昨年小さいながらも利益を計上出来ていたのです。私達が保証している債券に採用している2つの方法は最終的には同じ会計上の結果を生むでしょう。しかしながら、短期的には、両者間の報告利益の差異は相当な額になり得るのです。  私達は以前に当社のデリバティブ取引は、マーク・トゥ・マーケット会計を課せられているため、当社が報告する利益に大幅な変動をもたらすだろうと申し上げました。この上げ下げはチャーリーと私を励ましも悩ませもしません。実際、「下落」は私達に好ましい手段のポジションを増やす機会を提供してくれるという点で助けになるのです。私は当社の取引についてのこの説明によって皆さんも同じように考えるようになって頂きたいと願っています。 ****************************************************************** これらの説明を読んでいると、もっと複雑で難解極まりないなはずのデリバティブ取引が 簡単なものに思えてくるのが恐ろしいです(笑) バフェット氏は株主への説明をどうしてこれほど分かりやすく書けるのか、という質問に対して、 「自分の家族に事業内容を説明するつもりで書くのです。」と答えたそうです。 株主をパートナーとみなして、その道の専門家ではない人達にも分かるように説明するというのは、 バフェット氏の誠実さや株主への責任感が現れていると共に、自分が行なっていることを腹から理解しているからこそだと思います。 バフェット氏のこうした所は、株式投資に限らず仕事やその他の実生活上の行動をとる時にも参考にしたいと感じました。 また、デリバティブ取引の財務諸表上の負債や損益を評価する際も、 金融分野では常識とされているブラック・ショールズ式を用いながらも、 実質的(最終的)な損失については異なった見方をしていることが分かります。 デリバティブによる負債や損失は現時点でのフェア・バリューをもとにしていますが、 現時点で現金流出を伴うものではなく、 仮にバークシャーの期待が外れても損失は限定的であり、 先に受け取ったプレミアムによる運用収益も考えれば、最終的な損失の可能性は低いと見ているようです。 会計ルールや世間一般でもてはやされている公式による表面的な数字がどうであれ鵜呑みにせず、会計報告上従いはしても、 投資・経営判断において本質的なリスクや損質、利益に関しては自分の頭で考えて判断するというバフェット氏の行動原則がよく現れていると思いました。 デリバティブについての章はあと1回です。 バフェット氏の手紙の全文翻訳記事も、大分終わりに近づいて来ました。 もう少しだけお付き合い下さい。 (続く)

2008年版バフェットの手紙(10)-2

ウォーレン・バフェット氏が毎年、バークシャーのアニュアル・レポートの中で 株主にあてて書いている手紙の2008年版、その翻訳記事の続きです。 ※原文は下記のリンクから読むことが出来ます。 2008年版アニュアルレポート →http://www.berkshirehathaway.com/2008ar/2008ar.pdf 2008年版会長の手紙 →http://www.berkshirehathaway.com/letters/2008ltr.pdf 前回に続いて、デリバティブについての説明の章です。 今回の部分では、バフェットしはデリバティブ取引の持つカウンターパーティー(取引を行なう相手)・リスクについて説明をしています。 ******************************************************************  通常の株式や債券の取引では数日以内に一方は現金を受け取り、もう一方は証券を受け取って決済が完了します。それゆえカウンターパーティー・リスクはすぐに消滅し、それは信用問題が累積しないことを意味します。この迅速な決済プロセスが市場を完全な状態で維持するための鍵なのです。実際、それこそがNYSEとNASDAQが1995年に決済期間を5日間から3日間に短縮した一つの理由なのです。  対照的にデリバティブ取引は、しばしば何年も、あるいは何十年も決済が行なわれず、その間にカウンターパーティーはお互いに巨額の請求権を積み上げていくということが起こります。「紙切れの」資産と負債――しばしば定量化するのが困難です――は財務諸表の重要な部分を占めるようになりますが、これらの項目は何年も経たないと有効にならないのです。それに加えて、ぞっとするような相互依存の網が巨大金融機関の間で拡大しています。莫大な数の債権と債務が、他の手段でも高いレバレッジをかけがちな数社の巨大なディーラーの手に集中しました。トラブルを避けようとする参加者達は、性病を避けようとする者と同じ問題に直面しました。すなわち、あなたが一緒に寝ている人は、あなたとだけでなく他の人達とも一緒に寝ている人なのです。  たとえ話を続けるならば、色々な人と寝ることは巨大なデリバティブの取引者にとっては実際に役に立ちます。何故ならば、それによってもしトラブルが起こった場合、政府の援助が保証されるからです。言い換えれば、近隣全体を汚染する問題を抱えた企業だけが――その名前は出しませんが――確実に国の関わる問題になるからです(その結果は、私も申し上げるのは悲しいのですが、妥当なことなのです)。このいらいらさせるような現実から、借入金を積み上げ、巨大かつ理解不能なデリバティブ取引を指揮する野心的なCEO達のための「企業生存の第1法則」が導かれます。すなわち、そこそこの無能さではまったく無理で、とんでもない失敗が必要なのだ、ということです。  私が表現した破滅の原因を考慮すると、みなさんは何故バークシャーが251のデリバティブ契約(ミッドアメリカン社で業務上の目的で使用されているものと、ゼネラル・リーに残っているわずかな契約を除く)を結んでいるのか不思議に思われるかも知れません。その答えは簡単です。私は当社が所有している契約はどれも初めから価格が、時には劇的に、誤ってつけられていると信じています。私自身が、巨大金融組織のCEOはみな、最高リスク責任者でもなければならないという私の信条と首尾一貫した責任の下に、これらのポジションを開始し、そして監視しています。もし私達がデリバティブでお金を失うことになれば、それは私の責任です。  当社のデリバティブ取引は、契約が開始した時にカウンターパーティーが当社に支払いをする必要があるものです。それゆえバークシャーは常にそのお金を手にしていることになり、実質的に、カウンターパーティ・リスクは存在しないと考えることが出来ます。年末時点で、当社に対して支払われた額から当社が支払った損失額を引いた金額――デリバティブの「フロート」ということが出来ます――は合計で81億ドルでした。このフロートは保険のフロートとよく似ています。もし当社が元の取引で損益なしの状態であれば、長期間にわたって自由にそのお金を使うことが出来るでしょう。私達の予想では、確実とは程遠いですが、損益なし以上の結果が得られ、そしてその資金に対して得られる相当額の投資収益は二重に美味しいものとなるでしょう。  市場が当社の予想に反して動いたとき、当社はごくわずかなパーセンテージの契約しか、担保を差し入れる必要がありません。昨年の第4四半期に生じていたような混沌とした状況下でさえ、当社の有価証券ポートフォリオの1%以下しか担保に差し入れる必要がありませんでした(私達が担保を差し入れる時、私達はそれを第3者の元に預け、一方で預けた有価証券に対する投資利益は手元に留めておくことが出来ます)。2002年の当社の年次報告書で、私達は担保差し入れ要求がつくり出す致命的な脅威について警告しましたが、それは昨年、様々な金融機関において私達が現実の例として目の当たりにすることになりました(そして、その問題に関してですが、コンステレーション・エナジー社は倒産まであと数時間という所でミッドアメリカン社が救済措置を実行しました)。 ****************************************************************** デリバティブ契約には満期まで何年も、何十年もかかるものがあり、 その間にカウンターパーティーが倒産するなどして 契約不履行になってしまうというリスクがあります。 バークシャーでもデリバティブ契約を行なっていますが、 バフェット氏がバークシャーで手がけているものはほとんどが、 取引開始時点で相手からプレミアムを受け取るものなので、 その様なカウンターパーティー・リスクは実質存在しない、と説明しています。 なるほど、と思ったのは、バフェット氏がデリバティブを行なっている理由は、 契約開始時点で受けとるプレミアムを保険会社が保険料収入によって生み出すのと同じような「フロート(滞留資金)」としてみている、ということです。 たとえデリバティブ契約が損得なしで清算することになっても、 満期までの間自由に使えるその資金で投資収益を上げることが可能になる、というわけです。 デリバティブは危険なものだと認識していながらも、確率的に勝算があるリスクを積極的に引き受け、集めた資金を投資で増やすというのは、 まさにバフェット氏が保険会社で行なってきたことと本質的には変わらないのですが、それにしても目のつけ所が違うな、と感心しました。 この手紙の翻訳も大分終わりに近づいてきましたが、デリバティブについての話はまだ続きます。 もうしばらく、お付き合い下さい。 (続く)

2008年版バフェットの手紙(10)-1

前の記事から、少し間隔が空いてしまいました。 訳文自体は既に出来ているので、記事の更新が遅れた理由は単純に僕の怠慢です・・・。(^^;ヾ さて、ウォーレン・バフェット氏がバークシャーの株主にあてて書いた手紙の翻訳記事の続きです。 ※原文は下記のリンクから読むことが出来ます。 2008年版アニュアルレポート →http://www.berkshirehathaway.com/2008ar/2008ar.pdf 2008年版会長の手紙 →http://www.berkshirehathaway.com/letters/2008ltr.pdf 今回の段落は、デリバティブについての説明です。 バフェット氏はこの章に、今年の手紙の中で一番長い段落を割いています。 長すぎて2回でも収まりきらないので、4回に分けて記事にしようと思います。 この分野について僕自身の知識が不足しているせいもあり、不適当な訳があるかも知れません。 その時は遠慮なく指摘して下さい。 ****************************************************************** デリバティブ(金融派生商品)  デリバティブは危険なものです。それは私達の金融システムに劇的なレバレッジとリスクの増加をもたらして来ました。デリバティブによって、投資家がわが国の最大手の商業銀行と投資銀行を理解することはほとんど不可能になりました。ファニー・メイとフレディ・マックが何年にもわたって大規模な虚偽の利益報告をすることを可能にしたのも、デリバティブです。あまりにもフレディとファニーの報告が解読できないものだったために、両社の連邦取締機関であるOFHEO、その100人を超える従業員達はこの2つの会社を監視する(※訳注:原文では”oversight”に「監視」と「見落とし」の2つの意味をかけてあると思われます。)以外に仕事がなく、これら2社が帳簿を改ざんするのをすっかり見落としたのです。  まったく、最近の出来事は大きな金融機関のある有名なCEO(または前CEO)達が全然デリバティブの巨大で複雑な帳簿を管理できなかったことを証明しています。チャーリーと私もこの不運なグループに含めて考えてください。バークシャーがゼネラル・リーを1998年に買収した時、私達はその帳簿に記載された884の相対取引者(その多くを私達は聞いたこともありませんでした)との23,218のデリバティブ契約を理解することが出来ないと知っていました。そこで私達はそのビジネスを終了させる事に決めました。私達には何の圧力もかかっておらず、その時は市場も穏やかな状態でしたが、この仕事を大部分完了させるまでには5年もの時間と4億ドルの損失を費やしました。それが済んだ時、私達のこのビジネスについての感情はあるカントリー・ソングの一節で言い表すことが出来ました。「私はあなたを、これほどよく知るようになる前の方が好きだった。」  「透明性」の改善――政治家や評論家、金融監督官が将来の列車の残骸から目をそらすために好んで使う解決策ですが――はデリバティブが持ち出す問題を解決してはくれません。私は巨大で複雑なデリバティブ・ポートフォリオのリスクを、ほんのわずかでも正確に表現し測定することが可能な報告のしくみは全く知りません。監査役はこれらの契約を監査できませんし、規制機関もこれらを規制することが出来ないのです。これらの金融商品によって身動きが取れなくなった複数の企業の10-K(訳注:SECへの提出が義務づけられている、米国における有価証券報告書)の中の「ディスクロージャー(開示)」のページを読んだとき、結局私がわかったのは、そのポートフォリオの中で何が起こっているのか、私にはわからないということでした(そしてそれから、アスピリンに手を伸ばしました)。  規制の有効性についての事例研究として、フレディとファニーの例をより詳しく見てみましょう。これらの巨大機関は連邦議会によって創立され、両社に対する支配権は保持しつつ、両社が出来ることと出来ないことを指示しました。その監視を援助するために、連邦議会はOFHEOを1992年に創立し、2頭の巨獣に行儀よくふるまわせるよう、勧告しました。そうした動きによって、ファニーとフレディは私の知る限り、その職務に配置された人力で測った場合、最も厳しく規制される企業になりました。  2003年6月15日、OFHEO(同社の年次報告書はインターネット上で閲覧可能です)は2002年の報告書を連邦議会――特に上院と下院にいる4人の監督者、その中には他ならぬサーベンス氏及びオクスリー氏もいました(※訳注:ご存知の方が多いと思いますが、両者の名前が冠された『上場企業会計改革及び投資家保護法』、通称『SOX法』の法案提出者です)――に提出しました。127ページのその報告書の中には、自画自賛の様な以下の文面も含まれていました。「卓越した10年間を祝して」その電子送信された書簡と報告書は、フレディのCEOとCFOが不信任で辞任し、同社のCOOが解雇された9日後に届けられました。書簡の中で彼らの辞任については全く触れられておらず、それどころか報告書は、いつものようにこう締めくくられていました。「両企業とも財務的に健全であり、良好に運営されている。」  実のところ、この2つの企業は大規模な会計上のごまかしに以前から手を染めていました。最終的に、2006年、OFHEOは340ページに及ぶ酷評的なファニーの罪の歴史を発行し、その中でこの大失敗の責任を、想像はつくでしょうが、連邦議会とOFHEO以外のあらゆる関係者のせいにしたのです。  ベアー・スターンズの崩壊はデリバティブ取引の中に埋め込まれているカウンターパーティーの問題――私がバークシャーの2002年の報告書で最初に取り上げた時限爆弾のことです――にハイライトを当てました。2008年4月3日、有能なニューヨーク連邦準備銀行総裁であったティム・ガイトナーは救済の必要性を次のように説明しました。「ベアー社のデリバティブ・カウンターパーティーによって突然発見された、金融リスクから自己を保護する為にとった重要な金融ポジションはもはや効力を持たないという事実は、更に重大な市場の混乱を引き起こしかねない。このことはベアー社のカウンターパーティーが急いでそのポジションに対して抑えていた担保を換金し、既にもろくなっている市場で再び同様のポジションをとろうとするのを促進することになるだろう。」これは「我々は予測不可能な規模の金融上の連鎖反応を避けるために介入した。」というFRBの声明です。私の意見では、FRBはそうして正解だったでしょう。 ****************************************************************** ここまででは、主にフレディ・マックとファニー・メイのデリバティブに絡んだ不祥事、 そしてその2社を監視する立場にあったOFEHOという機関の怠慢・欺瞞について説明するとともに、強烈に皮肉っています。 次回は、デリバティブのカウンターパーティー(取引相手)・リスクとバークシャーのデリバティブ取引についての説明に入っていきます。 (続く)

2008年版バフェットの手紙(9)

ウォーレン・バフェット氏がバークシャーの株主にあてて書いた手紙の翻訳記事の続きです。 ※原文は下記のリンクから読むことが出来ます。 2008年版アニュアルレポート →http://www.berkshirehathaway.com/2008ar/2008ar.pdf 2008年版会長の手紙 →http://www.berkshirehathaway.com/letters/2008ltr.pdf 今回の段落は、バークシャーの普通株式や債券などへの投資についての説明になっています。 昨年は、この分野でも比較的大規模な動きがあったようです。 ****************************************************************** 投資  会計ルール上の理由で、今年は当社の保有する普通株式を2種類に分けました。下の表にはその第1の区分を示してあり、当社の貸借対照表上に市場価格で記載され、年末時点で5億ドル以上の価値がある投資については個別に表示してあります。 (※訳注:画像1を参照) ※ 当社の実際の購入価格であり税金計算の基礎でもあります。GAAPの「コスト」はいくつかの場合について簿価の切り上げや切り下げが要求された為、これとは異なっています。  これに加えて、当社は現在では「持分価値」――[当社の購入コスト]+[当社が購入して以降の(投資先企業の)留保利益]−[その留保利益が当社に配当として支払われたと仮定した場合の税金]――で帳簿に記載されている、ムーディーズ社とバーリントン・ノーザン・サンタフェ社の株式を保有しています。この会計上の取り扱いは通常、投資先企業の持分比率が20%に達した場合に要求されます。  当社はムーディーズ社の15%の株式を何年か前に購入し、それ以降は1株も買っていませんでした。しかしムーディーズは自社株の買い戻しを行なって来て、2008年の後半までに、その買戻しによって当社の持分が同社の発行済株式の20%を超えるところまで、同社の発行済株式数が減少しました。バーリントン・ノーザン社もまた自社株の買い戻しを行なってきましたが、当社の持分が20%まで増加したのは主に当社がこの株式を買い続けたことによるものです。  会計ルールが変更にならない限り、これらの株式は市場価格がどうなろうと「持分法会計」価値で当社の貸借対照表上に表示されることになります。これらの投資先の利益の当社持分は通常、当社の四半期または年間利益に(適用される税額控除後)含まれることになります。  私はこの報告書の初めの方で、昨年私は職務上の大きな失敗を1つ(あるいはもっとかもしれませんが、この1件は飛び抜けています)犯したと申し上げました。チャーリーや他の誰に急かされたわけでもなく、私は石油やガスの価格が天井近くだった時にコノコ・フィリップスの株式を大量に買ってしまいました。私は昨年の後半に起こったエネルギー価格の劇的な暴落を全く予期していませんでした。私は将来、石油が現在の40ドル〜50ドルという価格よりもずっと高くなる可能性は依然として高いと信じています。しかし現時点では、私は完全に間違っていました。更に、たとえ価格が上がったとしても、私の最悪のタイミングでの購入はバークシャーに数十億ドルものコストをかけてしまったのです。  私は他にも既にそれと認識できる失敗をしました。これらは比較的小さなものですが、しかし不運にもあまり小さくはありません。2008年の間、私は私には安く思えたアイルランドの2つの銀行の株式に2億4400万ドルを費やしました。年末時点で、当社はこれらの保有株式を時価の2,700万ドルまで減損し、89%もの損失となりました。それ以降も、この2つの株式はさらに値下がりしています。テニスの観衆なら私の失敗を「アンフォースド・エラー(自分からしてしまうミス)」と呼ぶでしょう。  昨年のプラスの側面として、当社はリグレー、ゴールドマン・サックス、ゼネラル・エレクトリックが発行した固定利付証券を合計145億ドルで購入しました。私達はこの投資それ自体を満足以上のものにしてくれた高い直接利回りを得られるこの契約を、とても気に入っています。しかしこれらの3つの購入の各々とともに、当社はおまけに、株主として相当額の資本参加が出来る権利を手に入れました。この大規模な買付け資金を捻出する為に、私はずっと持ち続けておきたかった数社の保有株式を部分的に売却する必要がありました(主にジョンソン・エンド・ジョンソン、プロクター&ギャンブル、そしてコノコ・フィリップスの株式です)。しかしながら、私は常にバークシャーを十分すぎる程の現金を持って運営することを――皆さんに、格付機関に、そして私自身に――固く誓約してきました。私達は明日の債務の支払いの為に見知らぬ人の親切を当てにしたくはありません。たとえそう選択することを強いられたとしても、私は余剰利益を上げる機会の為に、たった一晩の安眠さえも引き換えにしたくはないのです。  投資の世界は過小評価しすぎるリスクから過大評価しすぎるリスクへと遷り変わりました。この変化は小さくありません。振り子の振れ幅はとても大きな弧を描いています。2、3年前には、いくらリスクゼロの政府短期債がゼロに近い利回りで、長期債もわずかな収入しか得られないとはいえ、良格付の地方自治体の債券や企業の債券が今日の様な利回りになろうとは、考えられない様な状況でした。この10年間が金融の歴史に書かれる時には、それはきっと、1990年代後半のインターネット・バブルと2000年代初頭の住宅バブルとして語られることになるでしょう。しかし2008年後半の米国財務省債券バブルもほとんど同じくらい、驚くべきことだったとみなされるかも知れません。  現在の利回りで現金同等物や政府長期債にしがみつくことは、長期間続けるつもりであればほぼ間違いなく、恐ろしい方法です。もちろん、こうした商品の保有者は、金融の混乱が強まっていくにつれ、この方法に従うことでますます快適に――実際には、ほとんど自己満足に過ぎませんが――感じていることでしょう。彼らはコメンテーターが「現金は王様だ」とのたまうのを聞いて、たとえその素晴らしき現金が無きに等しい収入しか得られず、その購買力は長期的には確実に失われていくのであっても、自分達の判断が正しいと確信を深めるのです。  しかし、他人からの同意を得ることが投資の目標ではありません。実際、他者の同意は、脳を鎮静させ、新しい事実や先に下した結論の再点検を受け入れにくくしてしまう為、しばしば非生産的なものとなります。他者から賞賛されるような投資には気をつけて下さい。素晴らしい行動は通常、あくびをもって迎えられるのです。 ****************************************************************** 今年、バフェット氏が犯してしまったいくつかの失敗として、コノコ・フィリップス株の高値掴み(同社は石油米国第3位の大手で、原油価格がピークだった頃に大量購入してしまった)と、アイルランドの銀行で約90%の損失(!)を挙げています。 額としては比較的小さいといっていますが(それでも約200億円以上の損失)、90%もの値下がり。 バフェット氏が買った株でここまで値下がりするというのは聞いたことがありません。 それから、ジョンソン・エンド・ジョンソンの持ち株を半分売却、P&Gも一部売却というニュースが出ていましたが、 この状況であえてこれらの銘柄を売った理由は、 これまた大きな話題になっていたリグレー、GS、GEへの出資の資金捻出のためだったとのことです。 バフェット氏は「これらの銘柄を持ち続けておきたかった」と述べていますが、 別の場で「これらの銘柄は割高」発言もしていたようですし、 むやみに借入をせず、現金に余裕を持って運営をするために部分売却となったようです。 その他のトピックスとしては、 これまで普通株ポートフォリオに入っていたムーディーズ(格付会社)と バーリントン・ノーザン・サンタフェ(鉄道会社)の2社に対する バークシャーの持分比率が20%を超えたため、持分法が適用になったということです。 このムーディーズについてですが、昨年読んだメアリー・バフェットとデビッド・クラーク著の 「Interpretation of Financial Statements」(最近、邦訳本も出版されていました)の中で 同社について「格付会社は事業運営にほとんど資産を必要とせず、自社株買いを行なった結果、見た目は債務超過の状態になった」という内容の記述がありました。 それで気になって同社の財務諸表を入手してみたところ、果たしてその通りになっていました。 下の画像が2007年のムーディーズ社の貸借対照表です。 (画像が不鮮明になっていますがご容赦下さい) (※画像2を参照) 下の方に3つ赤い楕円で印をつけてあるのが、上から順に利益剰余金、自己株式、株主資本(自己資本)です。 見てのように、利益剰余金を大幅に超える額の自己株式を取得した結果、株主資本がマイナス(括弧つきがマイナスの表示)になり、いわゆる「債務超過」の状態になっています。 もちろん、同社の経営陣がそう判断して行なっている訳ですし、 実際事業運営上これでも問題はないのでしょうが、 それにしてもこれを見た時、行き過ぎた株主価値至上主義の極みのような気がして、何とも言えない気持ち悪さを感じてしまいました・・・。 これでこの章は終わりです。 次回からは、デリバティブについての説明に入ります。 非常に長い章なので、これも複数回に分けて記事にしていく予定です。 (続く)

2008年版バフェットの手紙(8)-2

ウォーレン・バフェット氏がバークシャーの株主にあてて書いた手紙の翻訳記事の続きです。 ※原文は下記のリンクから読むことが出来ます。 2008年版アニュアルレポート →http://www.berkshirehathaway.com/2008ar/2008ar.pdf 2008年版会長の手紙 →http://www.berkshirehathaway.com/letters/2008ltr.pdf この章では、昨年バークシャーが行なった免税債券保険についての説明の後半部分です。 前半部分で、昨年バークシャーは非常に有利な条件の債券保証を引き受けることが出来たが、 一方でこのビジネスがこの先も儲かるかどうかについては慎重な見方を崩さない、と述べていました。 後半ではバフェット氏がそのような慎重な見方をしている理由について説明しています。 ******************************************************************  免税債券に対する保険が非常に低い保険料率となっている理論的根拠には、デフォルトが歴史的に低かったという背景があります。しかしその記録は、発行体が保険のかけられていない債券を発行してきた経験を大いに反映しています。免税債券保険は1971年以前には存在しておらず、そしてその後でさえもほとんどの債券は保険をかけられないままでした。  全体が保険によってカバーされた免税債券は、保険をかけられていない、しかしその他の点では類似した債券とはいくらか異なった損失を経験するのは確かでしょう。唯一の疑問は、それがどれほど異なっているか、です。なぜそうなるかを理解するために、1975年にニューヨーク市が破綻の淵に立っていた頃に戻ってみましょう。当時、同市の債券――実質全ては保険をかけられていませんでした――は同市の裕福な住民やニューヨーク市内の銀行、その他の機関によって大量に保有されていました。これら地元の債券保有者は同市の財政上の問題が解決して欲しいと切に願っていました。そこでほどなく、多数の購入者達の譲歩と協調によって解決策が生み出されました。それがなければニューヨーク市民と企業の全員が、保有する債券によって広範囲かつ重大な損失を体験していたでしょう。  ここで、その代わりに同市の全ての債券がバークシャーによって保険を引き受けられていたと想像してみて下さい。同じようなベルトの引き締めや増税、労働者の譲歩、等々は進んで行なわれていたでしょうか?もちろん行なわれなかったでしょう。最低でも、バークシャーは必要な犠牲を「負担」することを求められていたでしょう。そして、当社のポケットの深さを考慮すると、必要となる貢献はほぼ確実に相当の額に上っていたことでしょう。  地方行政は将来、今日までよりもはるかに厳しい財政問題に直面していくことでしょう。昨年の報告書の中で私が述べた年金債務はこの悩みの巨大な貢献者となるでしょう。多くの市や州が2008年末での年金基金の状態を精査したら、きっとぞっとするでしょう。資産と現時点における負債の現実的数値に基づく評価との差額は、まったく驚くほどになっているでしょう。  大幅な収益の不足に直面したとき、その債券の全てに保険がかけられているコミュニティは、保険のかけられていない債券を地元銀行や住民によって保有されているコミュニティよりも、債券保有者にとって都合の良くない「解決策」をとろうとする傾向があるはずです。免税債券の分野における損失はまた、それが起こる時、発行体の間で大いに相互関係を伴いがちなのです。もし2、3のコミュニティが債権者に支払いをせず、債務放棄をすれば、他のコミュニティも追随する見込みが大きくなるのです。一体どこの市長や市議会が、はるか遠くの債券保険会社への苦痛よりも、地元市民に大幅増税という形で苦痛を与えることを選ぶでしょうか?  それゆえ今日、免税債券保険は――事実上、自然災害への保険と似て――危険なビジネスであるという様相を呈しています。両方とも、損失のない年が数年続いた後に、それまでの利益が全て吹き飛んでもまだ足りないほどの破滅的な体験に見舞われる可能性があるのです。したがって、当社は、他のモノラインが通常喜んで応じていた多くの種類の債券を避けながら、慎重にこのビジネスを継続するよう努めていくつもりです。                        ************  保険のかかっていない債券の分野での損失の経験を多くの債券が保険をかけられている擬似的な分野へと投影するような誤った考えが、金融の他の領域でも突然現れてくることがあります。数多くの「バックテスト」はこの類の誤りを招きやすいものです。それにも関わらず、これらは金融市場において頻繁に将来の行動の指針として勧められています(もし単に過去の財務データを眺めるだけで将来何を持っているべきか分かるなら、フォーブス誌が発表する400人の富豪は全て図書館の司書で占められているはずです)。  事実、不動産担保ローン関連証券による、感覚が麻痺するような額の損失は、大部分がセールスマンや格付機関、投資家によって用いられた歴史に基づいた欠陥のあるモデルによってもたらされたのです。これらの人々は、住宅価格がほんのわずかしか上昇せず、住宅投機が無視できる程度だった期間の損失経験を眺めていました。それから彼らはこの経験を将来の損失を評価する指標にしました。彼らは住宅価格が直近で天に昇るほどに上昇し、融資のやり方がずさんになり、そして多くの買い手が買う余裕がないはずの家を選ぶようになったという事実を、幸せにも無視しました。要するに、「過去」の領域と「現在」の領域は非常に異なる性質を持っていたのです。しかし貸し手、政府、そしてメディアはこの何にもまして重要な事実を認識できなかったのです。  投資家は過去のデータに基いたモデルは信用するべきではありません。ひどく大げさな聖職者がベータやガンマ、シグマ等のような難解な用語を用いて組み立てると、このようなモデルは強い印象を与えがちです。しかし、投資家はあまりにも頻繁に、これらのシンボルの裏にある仮定を確かめることを忘れがちです。私達の助言はこうです。「公式の衣をまとった占いには用心しなさい。」                          ************  BHACに関する文章はこれで最後です。この事業を運営しているのは誰かとあなたは思うかも知れません。私が保険契約を結ぶのにも手を貸してはいますが、全ての重労働はアジートと彼の部下がやってくれています。もちろん、彼らは既に年間何億ドルもの保険引受け利益とともに240億ドルのフロートを生み出しています。しかし31人のグループでどこまでの忙しさに耐えられるでしょうか?チャーリーと私は、今こそ彼らがまる一日働き始める時だと決断しました。 ****************************************************************** 以上で免税債券保険についての章は終わりです。 ちょっと難解な話でしたが、過去、免税債券のデフォルトが少なく低い保険料率で済んでいた時と現在とでは、一見状況は似ていても保険会社が抱えることになる潜在リスクは全く異なっている、と述べています。 また、過去のデータがこうだったからといって、それを似てはいても異なる状況にあてはめたモデルを妄信すべきではない、ということも述べています。 これは、過去のデータを全く見る必要がない、といっているのではなく、 過去の実績を単純に未来に延長するのではなく、自分の頭で考えて判断を下すべきだ、ということなのだと思います。 この翻訳記事も全体の半分を越えましたが、まだまだ続きます。どうか最後までおつき合い下さい。

2008年版バフェットの手紙(8)-1

ウォーレン・バフェット氏がバークシャーの株主にあてて書いた手紙の翻訳記事の続きです。 ※原文は下記のリンクから読むことが出来ます。 2008年版アニュアルレポート →http://www.berkshirehathaway.com/2008ar/2008ar.pdf 2008年版会長の手紙 →http://www.berkshirehathaway.com/letters/2008ltr.pdf 金融および金融商品部門についての章の続きですが、今年のこの章は主に住宅ローン問題についての内容になっています。 この章では、昨年バークシャーが行なった債券の保証を引き受ける債券保険(モノライン)について説明しています。 経営状態が困難に陥ったモノライン数社の救済を申し出たニュースを聞かれた方は多いと思いますが、バフェット氏はその提案の顛末と背景についても述べています。 比較的長い章なので、2回に分けて記事にします。 ****************************************************************** 免税債券保険  2008年の初め頃、私達はバークシャー・ハザウェイ・アシュアランス・カンパニー(BHAC)を州や市、その他の地方自治体が発行した免税債券に対する保険会社として立ち上げました。BHACはこれらの有価証券の発行体に対して、債券が一般に売り出される時(1次取引)とその後、債券が既に投資家によって所有されている時(2次取引)の両方において保険を引き受けます。  2007年末までに、このビジネスの主要な参加者であった半ダースあまりの会社は全て、大きな問題に陥りました。彼らの問題の原因はメイ・ウェストによってずっと以前に言い表されていました。「私は白雪姫、でも迷ったの。」  モノライン(債券保険会社のことをこう呼びます)は初めのうちは低リスクの免税債券についてだけ保険を引き受けていました。しかし長年の間にこのビジネスの競争が激しくなり、保険料が下落しました。収益が停滞あるいは下落する先行きに直面して、モノラインの経営者はさらにリスクの高い事業計画に転換しました。この中には住宅抵当債券の保険引受けも含まれていました。住宅価格が急落した時、モノライン業界はたちまち機能停止に陥ったのです。  この年の初め、バークシャーはモノラインの最大手3社の帳簿上の、免税債券に対して発行された保険の全てを引き受けるという提案をしました。これらの会社はいずれも存続が脅かされるほどの危機に瀕していました(各社とも否定していましたが)。当社は約8,220億ドル相当額の債券に対する保証を引き受ける見返りとして1.5%の保険料を要求しました。当社の提案が受け入れられていれば、当社はこれらの債券を所有する投資家が被る全ての損失に対して――いくつかのケースでは保証期間は40年に及んでいました――保険金の支払いを要求されることになっていました。当社の提案はばかげたものではありませんでした。後で述べる理由によって、その提案はバークシャーにとって相当のリスクをはらんでいました。  モノライン各社は即座に、そのうち1社か2社は無礼な言葉を添えて、当社の申し出を断りました。しかし、結局、その拒絶は私達にとっては非常に良い知らせであったことが分かりました。なぜなら、私はひどく安い保険料を提示していたからです。  その後、当社は二次市場において156億ドルの保険を引き受けました。そしてここからが肝心な所ですが、この事業の約77%は既に、それも大部分は前述のモノライン3社によって保険がかかった債券についてのものなのです。これらの契約では、当社は初めに保険を引き受けた保険会社が財務的に不可能な場合にのみ、債券の債務不履行に対して保険金支払いをする必要があるのです。  当社はこの「2次支払い」保険を平均3.3%の保険料で引き受けました。その通りです、当社は少し前、第1に支払い義務の生じる保険を引き受けようと要求した1.5%の保険料よりもはるかに多くの保険料を、2番目の支払い義務で済む保険を引き受けたことで受け取ったのです。1つの極端な例ですが、当社は実際に4番目の支払い義務を負うことに同意し、それにも関わらず1番目に支払い義務を負ったままのモノラインが請求した1%の保険料の約3倍の保険料を受け取ったのです。言い換えれば、他のモノライン3社が先に破綻してからでないと、当社は小切手を切る必要には迫られないのです。  当社が最初に大きな申し出をした3社のモノラインのうち2社はその後かなりの資本増強を行ないました。もちろんこれは、直接当社の助けになります。何故ならこの先、少なくとも短期的には、これら2社のモノラインが倒れることで当社が引き受けた「2次支払い」保険に対する保険金請求に対して支払いを迫られる確率が低くなるからです。2次取引の契約に加えて、当社は37億ドルの1次取引についても、9,600万ドルの保険料で保険を引き受けています。もちろん1次取引については、債券発行体に問題が生じた場合、当社が1番目に保険金支払い義務を負うことになります。  当社は当社が引き受ける保険の背後に、他のどのモノラインよりも何倍も大きな資本を有しています。その結果、当社による保証はそれらの会社による保証よりもはるかに価値があります。このことが、もののわかった投資家が既に他のモノラインに保険をかけているのに、当社から「2次支払い」保険を買った理由の説明になるでしょう。BHACは債券保有者から選択される保険会社というだけでなく、多くの場合ただ1社の許容可能な保険会社になったのです。  それにも関わらず、当社は引受けを行なっている事業について非常に慎重な姿勢を崩していません。そしてこの保険が当社にとって最終的に多くの利益を上げられるものとなるのは、確実な事とはほど遠いと思っています。その理由は単純ですが、私はこれまでその事が金融アナリストや格付機関あるいはモノラインのCEOの口からほんのわずかでも言及されたのを目にした事がありません。 ****************************************************************** (続く)

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