2012年10月の読書メーター読んだ本の数:26冊
読んだページ数:7610ページ
ナイス数:2063ナイス
消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 (新潮文庫)の
感想北九州で実際にあった、男性が内縁の妻の家族7人を監禁し、虐待し、挙句には殺し合わせて文字通り一家を消してしまったという前代未聞の事件。先日読んだ「黒い家」は小説だったが、このような事件が起こってしまう辺り、「事実は小説より奇なり」というのをヒシヒシと感じる。読み終えて、事件のグロテスクさよりも、どうしてこうなる前に犯人の魔の手から逃れられなかったのかという思いが強い。しかしこうなる前はごく普通の家族だった人々がこうもあっさり懐柔されてしまう辺りに犯人の口八丁さや狡猾さは文章から想像できる以上なのだろう。
読了日:10月2日 著者:
豊田 正義花宵道中 (新潮文庫)の
感想江戸後期の新吉原に生きた遊女達の悲恋。とても著者のデビュー作とは思えない筆致。登場人物は少しずつつながっていて、姉女郎や同僚の生き様をみながらも、ままならぬ恋に身を焦がす。決して自由になれない遊女という身分だからよりその悲哀が重みを増して心を打つような気がする。嶽本野ばらさんの解説がまた秀逸だった。
読了日:10月3日 著者:
宮木 あや子
おいしいコーヒーのいれ方 (5) 緑の午後 (集英社文庫)の
感想りつ子の気持ちを考えると、彼女のかれんに対する誤解を解こうとした勝利は間違っていたのかも知れない。でもやっぱり、勝利が(かれんとの関係抜きで)断っているのに諦めないのだからしょうがないんじゃという気も…。その後のりつ子の引きずり具合は、ごめんなさい正直に言って「この女面倒くせえ…」と思ってしまいました(最低の男ですね)。自分が振ったりつ子を気にかけてリハビリに付き合う勝利は優しいのだろうけど、この場合は冷たく突き放すべきだったんじゃなかろうか…。
読了日:10月3日 著者:
村山 由佳 ベーシック・インカム入門 (光文社新書)の
感想ベーシック・インカム入門とはいうものの、その考え方の歴史的な発生や思想的な記述が多く、日本での実現可能性についてはあまり触れられていませんでした。入門という意味なら小飼弾さんの「働かざるもの、飢えるべからず。」の方が(実際の是非はともかく)日本で導入するにあたっての方法論や財源についても提示されていてとっつきやすかったです。
読了日:10月4日 著者:
山森亮
ダカフェ日記の
感想空気感がすごくいい。カメラマンの著者の家族の日常写真。子供たちも笑っているだけじゃなく時にはぐずったり泣いたり怒ったり。こういう何気ないことの積み重ねで幸せはできているんだろう。いつか自分の家族にもこんな写真を撮ってあげたいなあ。
読了日:10月5日 著者:
アンチェルの蝶の
感想「月桃夜」でデビューした遠田潤子さんの2作目。舞台は現代の大阪。25年前の出来事を引きずって(ついでに足も引きずって)生きている飲み屋の亭主・藤太。中学の同級生・秋雄から預けられた少女ほづみとの生活が始まる。回想で徐々に明かされていく中学生時代の出来事。「月桃夜」のフィエクサとサネンもそうだったけれど、遠田さんは逃れられないしがらみを描くのが上手いなあ。終わっていなかった25年前の因縁が現在と結びつくラストまで一気に読み終えた。果たして藤太に「夏休みの続き」はあったのだろうか。
読了日:10月6日 著者:
遠田 潤子 新世界より(上) (講談社文庫)の
感想アニメ化で話題になっているので読んでみたが、これは面白い。手記を綴っている渡辺早季のモノローグから12歳の彼女たちの行く先に何か恐ろしい未来が待ち構えているだろうことはわかるが、序盤は小手調べといったところ?と思っていたら、夏季キャンプからの怒涛の展開。先史文明が崩壊した後、早季たちの祖先は呪力を一体どのようにして制御したのか?あるバケネズミのコロニーの異形の秘密とは?まだまだ肝心な謎はベールに包まれたままだし、ラストの意味深な終わり方で続きが気になる。
読了日:10月15日 著者:
貴志 祐介 新世界より(中) (講談社文庫)の
感想怒涛の展開だった上巻後半に比べると、事態が収束し2年後に舞台が移る中巻はやや落ち着いた印象、と思っていたら、恐ろしい悲劇が…。呪力を持った人間の内包する業、それを実体験と権力者からの伝聞で知る早季。それにしても人類の秩序維持のためには、子供達への記憶操作や間引きが必要になってしまうって…。悪鬼が生まれたら対抗手段がないことといい、そもそも人類が呪力を持ってしまったことが呪われた出来事だったのではという気がする。バケネズミの急激な進化も背筋が寒くなる。
読了日:10月16日 著者:
貴志 祐介 珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)の
感想書店に平積みされているのが気になって、何度も逡巡した挙句に購入。古都を舞台にした年上の女性安楽椅子探偵とワトスン役の男性という設定にどことなく「ビブリア古書堂」に似たものを感じたが、パクリとか二番煎じといったものではなく面白い作品だった。珈琲店タレーランのバリスタ切間美星やオーナーの藻川、主人公のアオヤマとキャラクターは立っていて、コーヒーの薀蓄も新鮮。謎解き部分は少し弱いかなと感じていたら、後半の二転三転する叙述トリックには見事に引っかかってしまった。綺麗に終わっているので続刊はない、かな?
読了日:10月22日 著者:
岡崎 琢磨 ねらわれた学園 (講談社文庫)の
感想今秋アニメ映画化されるのに伴って講談社文庫から復刊して平積みされていたので読んでみた。36年前の作品だけあって文章には時代を感じさせるけれど、シンプルなストーリーはなるほど映像化には持ってこいなのかも。シンプルすぎて物足りなかったとも言える。しかし中学生が学校で起きていること、それも超能力なんてことを両親に逐一相談しているというのはかえって新鮮だった。主人公の父親に理解があってファシズム的な様相を見せる生徒会に警鐘を鳴らしているなんて…!今回のアニメ映画ではこの原作をどう料理しているのか楽しみだ。
読了日:10月23日 著者:
眉村 卓 里山ビジネス (集英社新書)の
感想長野県のバスも通わない山の中でワイナリーを始めた著者が日本でワイナリーを起業することの大変さや、不利な立地条件にもかかわらず開業当初から併設のレストランが繁盛し続けている秘密について語っている。里山でオーナー自身が実際に生活し、そこでしか食べられないものを提供する生活観光の時代がこれから来るという。その主張自体はそんなに目新しいものではないのに不思議な説得力を持っているのは、著者がワイナリーという儲からない、気長な事業にコミットし、その土地と人々と共に生きていくという真摯さが籠もっているからかもしれない。
読了日:10月23日 著者:
玉村 豊男 てふてふ荘へようこそ (角川文庫)の
感想破格の安さの家賃の「てふてふ荘」は安さの分だけ訳ありで・・・。住人にははっきり見えるし、物や人がさわれない以外は生きている人間と変わらない感じで怖くない幽霊たちとのハートフルなハウスシェアリング物語。6号室まである部屋につき1人の地縛霊、それぞれの住人との交流を通して思いを通わせ、ある条件を満たせば成仏していく。思いが通い合った分だけ別れは寂しいけれど、幽霊たちと過ごしたことでそれぞれ少し変われたことが何より大切なこと。さやかさんの部屋には自分も住んでみたかった(*´Д`)ハァハァ
読了日:10月24日 著者:
乾 ルカ 親指の恋人〔文庫〕 (小学館文庫)の
感想現代の格差社会を象徴するような澄男とジュリア。強く愛し合っても二人の生い立ち、家族とのしがらみ、経済状況がそれを許さない。どうせ結ばれないならばいっそ死を選ぶ、という昔からありふれた悲恋のすじを現代の超高層ビル立ち並ぶ都心と海を臨む横浜を舞台に描いたのは見事。けれど、澄男にはもっと強く生きて欲しかったとも読み終えて思う。それほど強く彼女を愛していたなら、どんなに厳しい別れの条件を父に突きつけられても、一旦それに従って、実力をつけて後に彼女を取り戻すべきだったんじゃないだろうか。
読了日:10月25日 著者:
石田 衣良 小説・秒速5センチメートル (文庫ダ・ヴィンチ)の
感想最初に単行本で読んだけれど、その後DVDを観て「One More side」も読んだ後で文庫化されたのを再読。自分にはこんなきれいな初恋はないけれど、小学校〜高校までずっと片思いしていたので「コスモナウト」の早苗には共感するな。「桜花抄」で貴樹が積雪のため大幅電車遅延した時の焦燥感は、どこかで懐かしさを感じる。初読時はそれほどでもなかったけれど、改めて読み直すとじわ〜っと来るな。ああ、自分に「きっと大丈夫だよ」って言ってくれる人がいたらなあ・・・。
読了日:10月28日 著者:
新海誠 ナリワイをつくる:人生を盗まれない働き方の
感想どこかの企業に雇用されて給与をもらって生活したり、はたまた一念発起して自分で起業するといった生き方とはまた違った、「ナリワイ」というゆるいコンセプトの働き方を提唱する本。月3万円とか年50万円といった細かな仕事を自分の生活の周りから作り出し、生活の質を高めると同時に他人の役に立っていくというナリワイ。自分たちで床を張り替えたり、究極的にはみんなで協力して家を安く建てたりできたらすごい。そこまでいかずとも、低コストで生きる力、自分で直接稼ぐ力って本当現代人が忘れかけていることだと思う。
読了日:10月29日 著者:
伊藤 洋志読書メーター